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[HDS28-03] 確率論的津波ハザード評価のための特性化断層モデル群の設定について
キーワード:津波ハザード評価, 確率, 特性化断層モデル
日本全国を対象とした津波ハザード評価(藤原・他、2013、連合大会;平田・他、2014、本大会)のうち、「確率論的津波ハザード評価」のための津波シミュレーションには、将来起こり得る全ての地震を対象とする各種不確かさを考慮した特性化断層モデル群が必要である。ここでは、日本海溝周辺で発生する地震を対象とした特性化断層モデル群の設定例について津波波源設定の考え方とともに紹介する。最初に、津波の発生原因としては地震以外にも火山、地すべりなどもあるが、当面は地震によるものを対象とし、かつ、日本列島への影響が大きい日本周辺で発生する地震による近地津波を対象とする。次に、地震調査研究推進本部による「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価(第二版)」(平成23年11月25日)を参考に、津波を伴う地震を①東北地方太平洋沖型地震、②最大クラスの地震、③その他の地震(複数の領域が連動するが、①②に含まれないもの)、④単独領域型地震(震源の長期評価がされているもの)、⑤津波地震、⑥プレート内の正断層地震、⑦震源不特定地震に分類する。海域の活断層については未解明の部分が多く、同長期評価にも記載がないためここでは取り扱わず、将来考慮することとしている。②③及び⑦については想定しうる地震として漏れがないように追加したものである。また、⑥以外は同長期評価における評価対象領域を参考に、「全国1次地下構造モデル(暫定版)」における太平洋プレート上面に設定する。個別の特性化断層モデルの設定に際しては、まず巨視的パラメータとして断層面積Sから地震モーメントMoを求める。MoとSの関係式は、阿部による「日本付近に発生した津波の規模(1498年―2006年)」(http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/tsunamiMt.html)に記載されている1498年~2006年に津波が観測された地震でかつ太平洋側で発生した地震について、主として佐藤編著(1989)(「日本の地震断層パラメータ・ハンドブック」)により断層モデルの情報を整理して経験的な関係式を求めている。なお、剛性率μは浅部で小さく深部では大きいという研究事例があるが、ここでは5×1010(N/m2)で深さに関わらず一様と仮定した。さらに、断層モデルに微視的パラメータとして大すべり域、超大すべり域などすべり不均質を導入する。大すべり域、超大すべり域は、既往研究を基に得られた断層全体に対する一定の面積比で設定し、それぞれ平均すべり量の2倍、4倍(是永・他、2014、本大会)とする。大すべり域の配置は1つの震源断層に対して南北方向(海溝軸に平行)に北、中央、南の3通り、傾斜方向(海溝軸に垂直)に浅部、中央部、深部の3通り、合計9通りを基本とし、海溝軸沿いに大すべり域を設定する場合には、超大すべり域があるものも追加で設定する。但し、上の⑦震源不特定地震などは、想定する地震規模が小さいことから、「中央に平均すべりの2倍の大すべり域」の平均的なモデル一通りのみの場合を特性化断層モデル群として波源設定を行うものとする。以上のようにして日本海溝周辺における特性化断層モデル群設定の結果、地震規模Mw7.0から9.4までの地震について合計1800を超えるモデル数となる。現在、これらのモデル群について、個別に津波シミュレーションを実施し、地震の発生確率やそれに基づく沿岸での津波高さについての確率論的津波ハザードの評価などを検討しているところである。本研究は、「日本全国を対象とした津波ハザード評価の取り組み」の一環として実施された