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★ [HDS28-04] 日本全国を対象とした津波ハザード評価の取り組み
キーワード:津波, ハザード評価, 確率, シナリオ型津波予測, ハザードマップ, 利活用
津波対策を進める上で将来襲来し得る津波に関するハザード情報は必要不可欠な情報となる。平成23年東北地方太平洋沖地震によって東日本にもたらされた甚大な津波被害を踏まえ、防災科研は今後発生する可能性がある地震津波に対する事前の備え・対策に資することを目的とし、平成24年度から津波ハザード評価の研究開発への取り組みを開始した(藤原・他、2013、連合大会)。本取り組みは2通りの研究課題からなる;1つ目は日本全国の海岸および陸上に影響を与える可能性があるすべての地震津波を考慮する「確率論的津波ハザード評価」の研究、2つ目は特定の地震を対象におこなうシナリオ型の津波予測の研究である。「確率論的津波ハザード評価」として、(1)全国を概観した確率論的津波ハザード評価と(2)地域詳細版の確率論的津波ハザード評価の研究に着手している。全国を概観した確率論的津波ハザード評価の概要は以下のとおりである。(i)地震調査研究推進本部によって長期評価された地震とともに、「震源を予め特定しにくい地震」(地震調査委員会長期評価部会、2002)およびそれ以外の地震を含む、将来発生し得るすべての地震を対象とし、(ii) (i)のすべての地震津波に対してあらかじめ定められたルール(遠山・他、2014、本大会;是永・他、2014、本大会)に基づき簡素化した「特性化断層モデル」群を設定し、(iii)それらの特性化断層モデル群を対象に、初期水位を計算(新たな計算方法を検討中、秋山・他、2014、本大会)し、最小50mメッシュサイズの陸上・海底地形データを用いて浅水理論に基づき多数の津波予測計算を実施、(iv) 津波予測計算結果の不確実性やすべり不均質の不確実性(阿部・他、2014、本大会)を考慮した確率論的手法を用いて、沿岸津波高を対象としたハザード評価をおこなう。現段階では、昨年度試作した日本海溝沿いの地震を対象とした確率論的津波ハザード評価の改訂作業と南海トラフの地震を対象とした確率論的津波ハザード評価を行うための特性化断層モデル群の検討を進めている。地域詳細版の確率論的津波ハザード評価に関しては、最小10mメッシュサイズの陸上・海域地形データを用い、陸域の浸水確率、浸水開始時刻などを評価する手法を開発する(平田・他、2014、本大会)。地域詳細版の確率論的津波ハザード評価の結果は、カルテ形式などによる表示を採用し、地域毎の津波危険度が理解できるような表現方法を工夫する。その一環として、現在、浸水深に関するハザード曲線を計算し、確率論的な浸水深分布を評価する方法を検討中である(斉藤・他、2014、本大会)。シナリオ型の津波予測研究においては、各地域で想定された最大クラスの地震津波が発生した場合の、沿岸津波高、浸水範囲・浸水深などを予測することを目指す。予測結果については、津波堆積物、歴史津波史料、観測記録などの既往記録との比較を通じ、設定したシナリオモデルの妥当性を検討する予定である。これらの研究開発をおこなう上で、以下の作業が必要となる。(a) 日本全国を対象とした海域、沿岸部陸域の地形データ等の収集・整理と津波計算に必要な海域・沿岸陸域の地形メッシュデータの作成、(b) ハザード評価の信頼性の向上・改善および地域連携強化のため、自治体等の津波ハザードマップなどに関する情報を収集・整理(長田・他、2014、本大会)。最終的には、このような津波ハザード評価に関する作業の方針、作業の流れ、具体的な作業方法を整理し、標準的な津波ハザード評価手法として取りまとめる。また、津波ハザード情報の利活用の方法について有識者による検討および、自治体防災関係者を対象にした調査などを行っており、多様な想定利用者の具体的な活用方法を広く調査し、ハザード情報や評価データの提供・公開方法についても検討を行っている(大角・他、2014、本大会)。なお、本研究は地震調査研究推進本部津波評価部会での検討を支援する役目も担っている。