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★ [HDS30-05] デコルマ帯の発達様式から考察する海底地滑りの発生様式
海底斜面は基本的には安定である。しかし、海底地滑りがひとたび発生すると、海底に敷かれたケーブルなどのインフラストラクチャーを破壊し、時として津波を引き起こすことがある。これまで地滑り面にアクセスした例はほとんどなく、海底地滑りの発生様式は良く分かっていない。一方、過去20年間に渡りプレート境界先端部(デコルマ帯)の掘削が世界各地の沈み込み帯で行われてきた。ここではデコルマ帯掘削で明らかになった知見をレビューし、それを基に海底地滑りの発生様式を考察する。デコルマ帯の発達を規定する要因は、(1)スメクタイトに富む層準、(2)間隙水圧が上昇した層準、(3)続成作用によるセメンテーションを受けた地層と受けていない地層の境界、の3つに分けることができ、これらの要因が複数からみあっていることもある。これを海底地滑りの発生様式に適用するとすれば、以下のようになるであろう。地滑り面は、スメクタイトが濃集した層準に発達しやすいであろう。スメクタイトは火山灰の変質由来であることを考えれば、地滑り面の発達層準は火山活動の活発化とリンクしている可能性がある。一方、斜面堆積物における透水率のコントラストも地滑り面発達にとって重要であるかもしれない。例えば、透水性の悪い泥質堆積物の上に透水性の良い砂質層などが急速に堆積した場合や、メタンハイドレート由来の流体が透水性の悪い堆積物の下にトラップされた場合、過剰間隙水圧が発生し、地滑りを引き起こすきっかけとなることが考えられる。また、地温勾配が高いところでは、斜面堆積物中にセメンテーション境界が発達し、物性コントラストを形成することで、地滑りを引き起こしやすくすることが考えられる。