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[HGG01-03] 日常デジタル機器を用いた写真投映法による風景評価手法に関する研究-韓国・冠岳山を事例として-
キーワード:風景評価, GPS, GIS, 写真投映法
1. Introduction風景を資源対象とする空間の計画や設計の為には、利用者による風景認識や評価の把握は重要である。これまでの研究により風景認識モデルは視点と対象の関係によって理解されている。特に空間を操作対象とする造園学においては、視点場と対象の関係が重視されてきた。この風景認識を把握するための研究手法として、「Visitor Employed Photography」というカメラを用いた調査手法があり、地域の視覚的なイメージを抽出するための優れた手法と考えられている。しかし、従来のVEPでは、視対象の把握に関しては有効であるものの、視点場の抽出に関しては別途インタビューや被験者による記述を行う必要があるなどの欠点がある。そこで、本研究では、これらを克服した風景認識調査手法の構築のために、利用者が所持する日常デジタル機器である携帯電話のGPS機能を用いた風景認識調査を行うこととした。2. Outline of the experiment韓国のソウル市近郊のUrban Eco Parkに指定されているMt.Gwanakのトレイルを選定し、被験者60名による調査を行った。被験者には自らの携帯電話を用いて、評価する風景をGeotag付き写真によって撮影させた。同時に、携帯電話のGPSログアプリケーションを用いて、被験者の空間地理情報を取得させた。次に被験者の属性に関するアンケート調査を行った。得られた写真から、Mt.Gwanakにおいて評価される風景の対象と空間的特徴の分析を行った。地理空間情報の分析には3. Result60人合計で1119枚を収集した。次に同じ被験者が撮影した同一の構図の写真を取り除いた(121枚)。さらに、6名に関しては地理空間情報を得ることが出来ず写真を取り除いた(99枚)。その他の被験者の誤った地理空間情報を持つ写真を取り除き(45枚)残った842枚の写真を分析の対象とした。これらの写真を視対象と視距離によって分類を行った。その結果、トレイルを視点場として、林内景観を撮影したものが120枚と最も多く、眺望景観(105枚)や河川を中心とする空間を近景として捉えた写真が多く得られた。得られた地理空間情報をKernel density estimationを用いて、利用者が重視する視点場を抽出した(図-1)。その結果と視対象分類とを併せたところ、最も密度が高い場所は山頂付近では眺望景観や山頂の岩や建築物が視対象となっていた(図-1 ①)。また、トレイルと河川の接触ポイントの撮影密度(図-1 ②、③)が高い。また、寺院が位置する場所(図-1 ④)での撮影密度が高いという傾向がある。4. Conclusion本調査では、日常デジタル機器である携帯電話を用いて、VEPを行った。その結果、Mt.Gwanakにおいて、トレイルからの林内景観や眺望、河川空間の風景が評価されている点を示した。眺望や河川空間は特定の場所に集中する一方で、林内景観に関しては特定の空間的偏りは見られなかった。アンケートによる本調査に関する評価では42人(70%)が快適であったと回答した。快適でなかったと回答した18人(30%)であった。そのうち、2人(3.3%)がGPSに関するもので、残りはコースに関するものであり、調査手法そのものに関しては負荷の少ないものであると考えられる。このように、本調査では視点場と視対象を視覚的に抽出することが出来、今後の風景認識把握手法の構築として有用な調査手法となるであると考えられる。また、風景認識の文化的差異などを抽出するための国際比較研究においても利用可能である。