日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG21_29PM2] 自然資源・環境の利用と管理

2014年4月29日(火) 16:15 〜 18:00 421 (4F)

コンビーナ:*上田 元(東北大学大学院環境科学研究科)、大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、座長:大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、上田 元(東北大学大学院環境科学研究科)

16:15 〜 16:30

[HGG21-01] 北海道における大規模畑作経営の展開と農地利用―音更町を事例として―

*佐々木 達1 (1.札幌学院大学)

キーワード:農地利用, 畑作, 小麦, 大規模経営, 音更町

日本農業は,衰退傾向にあるとされている。とりわけ,農業において生産要素として極めて重要な農地資源が減少し続けている。耕地面積は1961年に609万haに達したが,その後の工場用地,道路,宅地等への転用や耕作放棄地の増加により2012年には454.9万haとなっており,ピーク時から4分の1の水準まで低下している。面積の減少だけでなく耕地利用率においても1960年の133.9%から91.9%と後退している。その一方で,耕作放棄地面積は40万ha,耕作放棄地率10.6%まで拡大しており,そのうち所有している耕地の3分の2以上が自給的農家と土地持ち非農家で占められている。  これらの農地減少の背景について,神門(2010)は農地利用の無秩序化を指摘し,農地以外の用途への転用の潜在的需要があること,および私有財産としての農地の処分は個々の判断にゆだねられている部分が大きいことが転用規制を形骸化させ,優良農地を含む無秩序な農地減少を招いていると指摘している。本間(2014)は,農地所有制限を通じた参入障壁と農地集積の遅れが農地資源の効率的利用を阻んでおり,農地を農地として利用できる仕組みが必要であるとしている。また,山下(2013)は,農業収益の低下こそが耕作放棄地や耕地利用率の低下につながっているとしている。 ところが,上記で指摘される問題点を北海道に照らし合わせると異なる様相を示す。転用期待については,中核的農業地域ほど人口密度が低く,都市的土地利用と農業的土地利用の競合は少ない。ただし,農地所有制限は農地制度上において共通した問題であるし,農地集積の点でも耕作地の分散の問題がある。農業収益性の低下については,北海道では規模拡大を通じた規模の経済性を追求してきた。 このように北海道農業は,構造改善事業による土地基盤整備の拡充,離農に伴う残存農家の規模拡大等を通じて土地利用型農業を中心とする専業的経営群による生産性の高い大規模農業を展開してきた。その中で,畑作地帯である十勝地域は,平均経営耕地面積が40ha規模にまで達し,農業産出額においても道内の23.6%を占め,販売金額1000万円以上の農家が84%となっている。本報告では,十勝管内音更町を事例に大規模畑作経営の展開と農地利用の実態について,①大規模経営はどのようにして維持されているのか,農業経営の特質から検討し,②農地の利用実態と規模拡大との関連性を明らかにしたうえで,③畑作地域における農地資源の管理についての展望について考察する。