日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM02_30PM1] Geomorphology

2014年4月30日(水) 14:15 〜 16:00 422 (4F)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、小口 千明(埼玉大学・地圏科学研究センター)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)、座長:島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)

14:30 〜 14:45

[HGM02-02] 地中レーダーを用いた液状化による地層変形探査

*瀬戸 真之1市川 美南海2北沢 俊幸2中村 洋介1田村 俊和2 (1.福島大学、2.立正大学)

キーワード:地中レーダー, 液状化現象, 東北地方太平洋沖地震, 関東平野

1.はじめに2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により,沿岸部を中心に液状化現象が観察された.液状化現象が発生すると地下から砂や水が噴き上げ,地表には亀裂やマウンドが形成される.遺跡の発掘で掘られたトレンチには地表まで到達していない液状化現象による砂の立ち上がりが認められる.このことから,液状化現象が発生したにもかかわらず,地表まで砂や水が到達せず,液状化現象が認識されないケースが多々あることは容易に推定できる.地表で液状化現象が認められなくても,地下で液状化現象が起きていれば,その場所の地盤の支持力は大きく減少する.そこで本発表では地表で確認できなかった液状化現象,すなわち液状化による地下での地層変形を地中レーダーによって捉える試みについて報告する.2.調査地の概要と調査方法 2011年の東北地方太平洋沖地震により,関東平野中央部に位置する渡良瀬遊水地の一角では液状化現象が発生した.地下から水と砂が噴き出し,亀裂やマウンドが形成されたのである.運動公園の地層は渡良瀬遊水地が造成される前は赤麻沼という沼沢地であり,泥,シルト,砂など河性の細粒な堆積物から構成されている. 本研究ではこの運動公園を調査地として,堆積物の構成を知るための簡易ボーリングと地中レーダーを用いた地下探査を実施した.さらに簡易ボーリングの結果と地中レーダーの探査結果とを対比するため,地中レーダーの測線にそって簡易ボーリングを実施することも合わせて行った.3.調査結果と考察採取した堆積物を,それぞれ粗粒砂,中粒砂,細粒砂,砂質粘土,粘土の5つに区分して記載した.地点A・B・Cは2013年,地点D・Eは2011年に掘削した.簡易ボーリングによる各地点の地下水位は地点Aでは115cm,地点B・C・D・Eでは200cmであった.地中レーダーは地下に電磁波を発射し,地下構造を画像化する.平滑な地層面は,地中レーダー断面でも平滑な反射面を示すことが多い. 地中レーダー探査より6つの探査画像を取得した.地中レーダー画像と簡易ボーリングによる柱状図とを重ね合わせると,粘土層は強い反射,砂層は弱い反射として画像に表されており,「砂質粘土層」と「粘土層」の境界および深さ「粘土層」と「砂層」の境界が読み取れた. 今回の地中レーダーによる探査結果は地下の平滑な地層を示すものではなく,電磁波の反射形に多数の乱れがみられた.地中レーダーによる電磁波の反射形に乱れが起こる要因として,埋設物の存在が考えられる.そのため,反射形の乱れが埋設管などによるものではないかを検討した.地中レーダーによる埋設管およびマンホールの検知例では埋設管は丸く上に凸型の幅20m程度の反射形として,マンホールは筒状の反射形 として,それぞれ表示される.地中レーダーの探査結果に見られた反射形は尖った凸型で幅2m程度の反射形であり,埋設管やマンホールのものとは反射形の形態や大きさが明らかに異なった.また地層中の礫により電磁波の反射が乱れたことも考えられるが,調査地が氾濫原であることや,ボーリングの際に地中レーダーに反応するような大きな礫が全くみられなかったことからその可能性は低い.したがって,深さ2mの砂層にみられる尖った凸型の反射形は液状化現象による地層の変形だと判断した.どの地点でも地層の変形は地表面までは達していない.このような液状化現象による地層の変形は地表では目視できないので本研究では潜在的 液状化 と呼ぶ.地中レーダーに捉えられた潜在的液状化による噴砂の幅は0.5mから2.5mで,立ち上がりの高さは0.2mから0.95mであった.また,測線上に見られる潜在的噴砂の間隔は1mから2m程度の部分と20m程度の部分とがあった.1mから2mの間隔は地表で観察された亀裂の間隔と一致する.他方で20m程度の大きな間隔も見られる.これは液状化現象により発生した砂脈の立ち上がりと地中レーダーの測線との位置関係による違いであると思われる.東北地方太平洋沖地震の起きた2011年3月11日の前は9日間連続で降雨があり,地下水位はここで用いている2011年4月や2013年8月のボーリング調査で判明した値よりも高かった.したがって,液状化現象の発生が疑われる深さ2m付近の砂層は地震発生当時には多量の水分を含んでおり液状化の発生条件を満たしていたと判断できる.東北地方太平洋沖地震の際にこの渡良瀬運動公園で液状化したのはこの層であったといえる.東北地方太平洋沖地震の際に液状化が確認された渡良瀬遊水地内の運動公園で調査を行い,液状化発生層位が特定できること,多数の潜在的液状化 が認定できることを明らかにした.さらに地中にある砂脈あるいは砂柱の幅,高さ,間隔のデータを得ることができた.