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[HSC25-09] 災害発生直後の迅速な情報把握に向けて‐平成25年台風26号伊豆大島災害におけるクライシスレスポンス
キーワード:クライシスレスポンス, 情報収集, SfM (structure from motion), 平成25年台風第26号, 伊豆大島
災害発生直後の被災範囲や被災状況に関する迅速な情報の把握は、その後の救助や復旧活動、調査等の意思決定において極めて重要である。自然災害情報室(防災科学技術研究所)では、災害直後に各機関より公開された諸情報を統合し災害対応に活用すべく、関連情報のリンク集を作成し公開している。この取り組みの一環として、2013 (平成25) 年台風第26号による伊豆大島の斜面災害に関して、斜面変動領域の特定、および被災家屋の概要把握を目的として、国土地理院が公開した被災後の空中写真をSfM (Structure from motion) で解析し、家屋被害を判読や傾斜角図、被災地の三次元モデルPDFなどの解析図を作成したので紹介する。自然災害情報室では、発災から10日後の2013年10月25日に各機関の災害情報を集約したWebページを公開した (http://dil.bosai.go.jp/disaster/2013H25T26/)。Webページの内容は、災害の観測と解析結果、災害メカニズムの解説、過去の災害事例、被害情報、調査速報などで構成される。このコンテンツの一部として、斜面変動と被災家屋に関する解析図を掲載した。データソースは、国土地理院が2013年10月17日に撮影し地理院地図 (当時:電子国土Web.NEXT) で公開した被災後の空中写真である。写真のサイズは2,355ピクセル×3,608ピクセル、撮影高度は約1,400 m、合計31枚の写真を使用した。なお、この写真画像はWeb公開用のため、短辺、長辺ともにオリジナルデータの4分の1にリサイズされている。写真データのExifには、デジタル航空カメラのモデル (UltraCamX),および撮影位置の経緯度と高度が記録されていた。また、SfM処理する際の地上基準点 (GCP) は地理院地図から経緯度とレーザ測量による標高値を読み取り、20点を設定した。これらの写真をSfMで処理することにより、地上解像度0.3 mのDSM (Digital surface mode) およびオルソ画像を生成した。SfMソフトウェアにはAgisoft PhotoScan 0.9.1を使用した。ここで作成したオルソ画像に数値地図 (国土基本情報) の住家・非住家建物、道路、河川レイヤーをオーバーレイし、建物ポリゴンとオルソフォトの家屋とを比較することにより、家屋の流失と被災を目視判読し、家屋被害状況図を作成した。また、DSMから等高線および傾斜角を計算し、傾斜分級図を作成した。傾斜分級図では、崩壊した領域と地山との境界に明瞭な遷急線が描かれるため、斜面崩壊領域を明確に読み取ることができる。また、オルソフォトおよびDSMから被災地域の三次元PDFを作成した。結論として、常時から地形、地質、地物などの国土に関する基礎データを常備しておき、自然災害の発生直後から各機関が公開する情報と合わせることによって、災害メカニズムの把握、被災エリアの認定、被害状況の確認などに有用な情報を得る事ができる可能性がある。しかし、現状では、災害発生時に様々な機関から発信される情報を統合的に閲覧できる仕組みが存在しない。今後は、災害時の系統的かつ網羅的な情報収集、解析、発信体制を構築する。