日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC25_30AM1] 人間環境と災害リスク

2014年4月30日(水) 09:00 〜 10:45 421 (4F)

コンビーナ:*青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、鈴木 康弘(名古屋大学)、小荒井 衛(国土地理院地理地殻活動研究センター地理情報解析研究室)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、宇根 寛(国土地理院)、中村 洋一(宇都宮大学教育学部地学教室)、松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、原 慶太郎(東京情報大学総合情報学部)、座長:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)

10:15 〜 10:30

[HSC25-P04_PG] 自主防災組織による火山噴火対策図上防災訓練 -那須岳火山地域での実施事例-

ポスター講演3分口頭発表枠

福嶋 民雄1高森 秀司2稲葉 茂3、*中村 洋一4那須 町5 (1.公益社団法人全国防災協会、2.一般社団法人DCM推進協議会、3.NPO栃木県防災士会、4.宇都宮大学、5.栃木県那須町)

キーワード:防災, 図上訓練, 火山災害, 活火山, 噴火, 自主活動

栃木県北部に位置する那須岳火山は、1408-1410年のブルカノ式マグマ噴火(VEI4)で、茶臼岳溶岩ドームを形成して火砕流が発生、その後に融雪型泥流があって180余人の犠牲者を出した。近年で1953年、1960年、1963年にそれぞれ小規模の水蒸気爆発型噴火が発生している。一方、 那須岳地域は国立公園に指定されている景勝地で、周辺地域は温泉資源が豊富のため、多くの観光客を集めており、山麓地域には大規模な別荘地や保養施設も多い。
こうした那須岳地域の大規模な観光地化にともなって、地域住民よりはるかに多くの非定住者が訪れるようになり、また1960年代以降に開発された高原別荘地区への移住者も多く、新・旧住民の共同よる防災体制の構築が求められている。阪神・淡路大震災があり、東日本大震災での被災もあって、大規模自然災害に対する防災意識の高まりとともに、地域住民同士の連携による避難及び避難生活など自主防災組織の役割が期待されつつある。那須町の近年の災害事例としては、1998年8月の那須大水害、2011年東日本大震災での被災および福島県からの大量避難民の受け入れなどの経験はあった。火山噴火災害については小規模水蒸気爆発による火口周辺での噴石と降灰程度で、規模の大きな火山災害の経験はない。那須岳の火山防災マップとハンドブックは、2002年3月に公表されて全戸配布されている。また、2010年3月の噴火警戒レベル導入に伴って、改訂版の火山防災マップとハンドブックも公表されている。この間、定期的な防災訓練時などに火山噴火を想定した防災訓練なども何度か実施している。
そこで、公益社団法人全国防災協会、一般社団法人DCM推進協議会、NPO法人栃木県防災士会の連携で自主防災組織による那須岳火山噴火に対する防災力の向上を支援するため、那須町において2012年度からの2ヶ年事業を実施した。初年度はシンポジウム、セミナー、住民意識調査等事前リサーチを行い、2年度にリサーチ結果を反映させた火山現象講座・火山噴火警報講座・ハザードマップの見方講座、DIG・HUG訓練など事前の教育・研修を実施して知識の共有を図り、図上防災訓練を実施した。
初年度には、防災についてのンポジウム、イベント、セミナーを、那須町の経済界・高原別荘分譲会社・自治会等リーダー向けなどに実施し、意識調査を行った。その結果をみると、自然災害へ不安を感じる割合は一般的に、地震、洪水、土砂災害の順に高くなっているが、火山防災関係イベント後では、火山が他の自然災害より高い結果が出ている。また、火山防災マップは配布され所有しているが活用されていなくて、火山噴火防災対策を誘導するような動機付けにはなっていない。火山防災マップを見てリスクがあるのはわかるが、避難などの行動への展開が不明である。火山噴火について知識も経験もないので、火山災害現場で実務経験をした者の話を聞きたい、などの意見が出されていた。第2年度では初年度の成果をふまえて、雲仙普賢岳噴火災害報告のセミナー、火山現象や火山噴火警報、ハザードマップについての見方講座を開催し、DIG(Disaster Imagination Game)・HUG(避難所運営ゲーム)形式での図上型防災訓練を実施した。対象は自主防災組織を主体とし、ボランティア、自治体防災担当者などが加わった。災害対応等の知識と実経験とを有していない自主防災組織にとって、こうした訓練は荷が重すぎるのではとの危惧もあったが、予め教育・研修などの準備をすれば、発災時それぞれの役割に応じた行動が可能となることなど、充分な成果が得られることが事後アンケート結果からは明らかとなった。
これらの成果をとりまとめて報告書とし、自治体防災担当部局や関係機関に配布して、地域住民向けへの防災訓練を今後積極的に実施していく際の基礎資料としてもらい、火山地域で効果的で堅牢な防災体制が構築されていくために有効に活用してもらうことを期待したい。