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[HTT32-09] 衛星リモートセンシングによる中国内モンゴル自治区における植生変動とその要因解析
キーワード:内モンゴル, 沙漠化, 植生変動, Mann-Kendall rank statistic法, SPOT VEGETATION
はじめに20世紀50年代以来,中国においては大規模の草原開墾を三四回にわかって行った.特に1980年代以降は,生産責任制および土地請負制などの投入により生産意欲を向上させ過放牧過耕作をもたらした.中国では1990年代から持続可能な発展を目指し,2000年以降は砂漠化・環境問題を重視するようになった.2000年以降,内モンゴル自治区では,生態移民,退耕還林還草,新三牧などの環境保護政策が実施されているが,一方で内モンゴル全域が西部大開発の対象地域となっている.よって,2000年以降は社会経済的要因による土地被覆変化は大きいと考えられる.近年の土地被覆変化を空間的に把握することが出来れば,2000年以降実施された環境保護政策の成果を確認することが出来るし,また今後の政策に基本資料として使用されることが出来る.そこで本研究では中国内モンゴル自治区における1999年以降の植生変動とその要因解析を目的とする.使用データ・SPOT VEGETATION (1999年~2012年) ・内蒙古統計年鑑(1999年~2012年)・世界気象資料 (1999年~2012年)・ランドサットデータ TM、ETM手法10日コンポジットで作成されているSPOT VEGETATIONの正規化植生指数NDVIを用いて、ピクセル毎に一年36旬の最大NDVI(NDVImax)と年間積算値(NDVIsum)を計算し、Mann-Kendall rank statistic法を用いて1999年から2012年の間のトレンド検定を行った。トレンド解析結果の検証にはランドサットデータを用いた。また、植生増減要因の検討には内蒙古統計年鑑を用いた。結果とまとめNDVImaxとΣNDVIのトレンドは概ね類似した分布となった。NDVI増加地域は西のオルドス高原の東部、ホルチン南部地域、東北の呼倫貝爾市の中部と東北部地域である。NDVI減少地域は巴彦?爾市の烏拉特後旗と烏拉特中旗に多く分布していることがわかる。中間分解能であるSPOT/VEGETATIONデータによる広域植生変動トレンド解析の結果を検証するため、比較的高分解能であるランドサットデータを用いた。ランドサット画像による解析結果はトレンド解析結果と一致した。よってトレンド解析の結果の信頼できると考えられる。植生増減トレンドの要因解析では、気候的要因と人間活動による要因の二つ要因を検討した。気候的要因解析結果では、内モンゴル地域の植生は温量指数と明瞭な相関が見られず、年間降水量と正の相関が明瞭であったことから、内モンゴル地域の植生は降水量に支配されていると考えられる。この結果は近藤(2002)とSuzuki( 2006)で示す結果と同じであった。人間活動による要因解析では、特にホルチン周辺地域での植生増加トレンドは耕地面積が増加、灌漑面積も増加、また植林も活発であるなどの人間活動によるものであった。呼倫貝爾地域の植生分布から見るとほか地域にない針葉樹、湿地などがある。一部の森林域ではNDVIsumが増加傾向トレンドを示した、それは地球温暖によって樹木の生育期間が延びて植生増加トレンドを示したと考えられる。また、湿地だった地域では植生活発となっている、統計年鑑データからはこれらの地域では耕地面積が増加していることを確認できた。よって湿地が開発されている可能性が非常に高いと考えられる。オルドス高原の植生増加傾向は主に退耕還林還草などによる植林、草原回復などが考えられる。オルドス高原の一部の地域では耕地面積が減少しているが、灌漑面積がわずかながら増加傾向であるので、灌漑設備が整備され灌漑面積が増加したことも要因であると考えられる。オルドス高原の東部のほうが植生増加傾向であるピクセルが多かったことは、東部では西部より降水量が多いこと、地形的に西部より低いため地下水が豊富であること、また東部中心に開発を進めている地域のあることで東部のほうは植生増加傾向が明瞭であったと考えられる。植生減少傾向を示す地域は西の阿拉善盟の東部および巴彦?爾市北部の烏拉特後旗と烏拉特中旗に多く分布していることをわかった。その要因は沙漠化がこの解析期間の14年間で広がったことによるものと考えられる。