日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT33_2AM1] UAVリモートセンシングが拓く新しい世界

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 211 (2F)

コンビーナ:*近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長谷川 均(国士舘大学文学部地理学教室)、桑原 祐史(茨城大学工学部都市システム工学科)、井上 公(防災科学技術研究所)、座長:井上 公(防災科学技術研究所)、長谷川 均(国士舘大学文学部地理学教室)

09:00 〜 09:15

[HTT33-P02_PG] 1964年新潟地震の劣化した空中写真フィルムを用いたSfMによるオルソ画像の作成

ポスター講演3分口頭発表枠

*鈴木 比奈子1内山 庄一郎1 (1.独立行政法人 防災科学技術研究所)

キーワード:SfM, 劣化空中写真, 1964年新潟地震, GCP, オルソ画像

近年SfM (Structure from Motion) などの画像処理をベースとした三次元形状復元技術を用いて,デスクトップPCで空中写真からオルソ画像の作成が可能になった.防災科学技術研究所では,1964(昭和39)年に発生した新潟地震の空中写真ロールフィルムを所蔵しており,これら画像から,液状化による噴砂や建物の倒壊などの被害状況を詳細に読み取ることができる.しかし,このフィルムは50年にわたる長期間の保存により劣化が著しい.フィルム全体がコンブ状に歪み,膜面剥がれが発生している.画像全体が不均一に伸縮しており,測量精度の低下が予想される.さらに,画質の粒状感が強く,画像のマッチングにも問題が生じる可能性がある.本稿では,劣化が進んだ古い資料に対するSfM適用の可能性を検証するため,実際に劣化した空中写真画像を計算ソースとして用い,SfMによるオルソ画像の作成を試みた.
使用した空中写真は,1964(昭和39)年7月21日撮影のカラー空中写真で,カメラはRC5a (No. 213),焦点距離152.12 mm,撮影高度は1,520 m,撮影縮尺は1:10,000である.SfM処理に使用した枚数は3コース19枚,撮影範囲は新潟市内の信濃川河口周辺である.空中写真ロールフィルムは写真測量用のスキャナーを保有する専門事業者に20 μm (1,270 dpi) でスキャニングを依頼した.
SfM処理の事前準備として,すべての空中写真について主点位置および画像一辺のサイズを同一にするため,以下の作業を行った.19枚の空中写真は四隅の基準点からなる矩形が画像データの4辺と平行になるよう角度を補正した.さらに,画像の縦横の辺が11,350 px×11,350 pxとなるよう切り出した.拡大・縮小は行っていない.切り出す際,空中写真の周囲の黒枠が入らないようにした.これらの処理にはAdobe Photoshop CS6を使用した.SfMでは,これらの空中写真データを基に処理を行った.SfMソフトウェアにはAgisoft PhotoScan 1.0.1を使用した.最初に写真位置の推定を行い,次にReprojection error(再投影誤差)が1.0以上の点群データを削除した.構築された点群データに対し,GCP (Ground control point) を与え,オルソ画像を生成した.GCPは地理院地図1974~1978年撮影のカラー空中写真を参考とし,緯度,経度,標高値 (5 mレーザー) の情報を用いた.GCPは三次元モデル全体において3点(写真の北部,南西部,南部の道路の交点)および6点(先の3点に北西部,南部,南東部を加えたもの)の2通りを設定した.
このようにしてSfM処理によって生成したオルソ画像と地震直後の地盤災害等の現地調査図である「新潟地震地盤災害図(西田ほか,1964)」(縮尺1:3,000)とをオーバーレイした結果,1:3,000程度の縮尺であれば目立った位置ずれがなく,十分実用に耐えうるオルソ画像を得ることができた.オルソ画像の地上解像度は0.2 m/px程度であった.GCPの点数に関して,結論として3点で十分な精度を得ることができた.一方,6点のGCPではむしろ精度が低下した.GCPは,設置点数よりも,正確な位置に設置することの方が重要である.3点のGCPは人工改変の少ないと思われる道路の交点を選出したことに対し,ここに追加した残り3点のGCPは敷地の角や新しく完成したバイパスに近い旧道の交点であった.新潟市内の信濃川周辺地域は,ほとんどの領域が標高5m未満だが,後年の人為的な改変により標高値は大きく変動する.今回GCPの標高値として採用したデータは地理院地図の標高値 (5 mレーザー) であり,1964年の空中写真撮影時には存在しない構造物等に近接した地域のGCPは,かえって地図の精度を落とす結果となった.
以上の結果から,劣化した古い空中写真から,十分な精度をもったオルソ画像が得られることが明らかになった.また,それらの精度を上げるためには,必ずしもGCPを多く設定する必要はなく,撮影当時の地形にできるだけ近い地点を選定する必要がある.