日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT34_28PM1] 地理情報システム

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 422 (4F)

コンビーナ:*小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、村山 祐司(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球環境科学専攻)、柴崎 亮介(東京大学空間情報科学研究センター)、吉川 眞(大阪工業大学工学部)、座長:吉川 眞(大阪工業大学工学部)、村山 祐司(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球環境科学専攻)

15:15 〜 15:30

[HTT34-05] 鉄道サインに着目した屋内測位手法の検討

*清水 智弘1吉川 眞2 (1.大阪工業大学 工学研究科、2.大阪工業大学 工学部)

キーワード:駅空間, 鉄道サイン, 屋内測位, 画像処理

屋外での位置情報取得は、衛星測位システムの出現により非常に簡便なものとなった。また、平成22年の準天頂衛星初号機(愛称:みちびき)の打ち上げによってサブメートル級やセンチメートル級の高精度な測位が可能となった。今後もさらに測位衛星の打ち上げによる日本版GPSの構築が予定されており、利用範囲や利用時間がより一層拡大されることが期待される。位置情報における簡便化、高精度化によって、位置情報を活用したさまざまなサービスが創出されてきている。その結果として、位置情報の重要性は近年ますます高まってきており、社会インフラとして欠くことのできないものになってきている。このような状況のもとで、次のステプとして、衛星測位の利用が困難な屋内における位置情報の取得が重要視されている。平成24年に策定された新たな「地理空間情報活用推進基本計画」の中でも、屋内測位技術を充実させ、屋外・屋内を区別せず測位できるシームレスな測位基盤の整備や位置情報サービスの展開に向けた取組みを推進すべきとしている。本研究では、屋内環境として「鉄道駅」に着目した測位技術手法について検討する。鉄道駅では、アメニティ性の向上や移動の円滑化などが求められると同時に、高齢化にともなうユニバーサルデザイン化、人口減少社会にふさわしいコンパクトかつ機能性に優れた空間の創出などが求められていくようになった。そのような中で、近年、とくに大都市圏の鉄道駅において、商業施設や業務施設などの複合的な機能を備えたターミナルビル(駅ビル)の開発が進められ、その空間構造は複雑なものへと変化してきている。すなわち鉄道駅は、単なる交通結節「点」としてではなく、都市の顔として多様な利用者からより日常的かつ多彩なニーズに応えていくことが求められる複雑な「空間」へと変わってきたといえる。このような複雑さを増しているだけでなく、公共性の高い鉄道駅という屋内環境において位置情報を正確に推定することは、利用者にとって安全でやさしい空間を創出していくために重要であり、その効果は大きいと考える。鉄道駅空間の中で「空間上の位置関係」を示す需要な情報伝達手段として「サインシステム」がある。サインシステムは、動線に沿って適所に配置され、移動する利用者への誘導・案内といった情報提供を視覚的に行っている。駅空間内での位置を推定するためには、これらサインシステムを活用することが効果的ではないかと考え、サインシステムを活用した屋内位置推定手法について検討した。とくに、直感的な情報伝達に優れている「ピクトグラム」に着目した。本研究では、まず、屋内位置推定のために必要となるフロアマップとサインデータベースの構築を行った。サインの平面位置(x,y)だけでなく掲出高さ(z)といった3次元情報も撮影した写真を元に抽出し、データベースとして構築している。さらにサインのサイズ(幅×高さ)、向き、記載されているピクトグラムの種類と数量といったサインの内容についても構築している。つぎに撮影された写真から屋内位置を推定することにした。具体的には、画像処理技術を用いて撮影された写真画像内からサインの内容(ピクトグラムの種類や数量)を抽出した。抽出されたサインの内容と構築したサインデータベースとマッチングさせることにより、フロアマップ上のどのサインを撮影したのかを特定することができる。つぎのステップとして特定されたサインの「どの辺りにいるのか」といった「空間上の位置」を把握する必要があり、そのためにはサインに対してエリア範囲を設定する必要がある。本研究では、撮影された写真を利用することを想定している。そこで、「歩行中にサインの形状が視認できる、あるいはサイン内に記載されている内容が視認できる時に写真を撮影する」と仮定し、サインの形状ならびに内容(ピクトグラム)の有効視野範囲をエリア範囲として設定した。さいごに、エリア内の「どの位置にいるのか」といった詳細な位置の推定が必要となる。そこで、撮影した写真から位置を推定するために立体写真測量技術を活用した位置推定を行った。この立体写真測量技術を適用させるためには、3点の既知座標が必要であるが、サインデータベースの格納されたサイン躯体4隅の3次元座標を活用することで位置推定を行った。本研究では、撮影写真画像に着目して「撮影画像からのサイン抽出」、「エリア範囲の推定」、「ポイント位置の推定」を検討し、屋内測位手法として一定の成果が得られたと考えている。今後は、各手法の精度向上と自動化を進めていくのと同時に各手法を統合させ、汎用性の高いシステム化を目指していきたい。