日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG39_1AM2] 都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト

2014年5月1日(木) 11:00 〜 12:45 502 (5F)

コンビーナ:*平田 直(東京大学地震研究所)、佐藤 比呂志(東京大学地震研究所地震予知研究センター)、佐竹 健治(東京大学地震研究所)、鶴岡 弘(東京大学地震研究所)、堀 宗朗(東京大学地震研究所)、酒井 慎一(東京大学地震研究所)、座長:平田 直(東京大学地震研究所)、酒井 慎一(東京大学地震研究所)

12:15 〜 12:30

[MAG39-12] 近年の地震に対するS-P時間・初動の整理とそれらに基づく1921年茨城県南部・1922年浦賀水道付近の地震の地震像

*石辺 岳男1佐竹 健治1村岸 純1鶴岡 弘1中川 茂樹1酒井 慎一1平田 直1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:S-P時間, 初動, 1921年茨城県南部の地震, 1922年浦賀水道付近の地震

明治・大正期に関東ならびにその周辺域において気象官署(気象大学を含む)によって設置,観測が行われていた21観測点(水戸・柿岡・筑波山・宇都宮・足尾・前橋・熊谷・秩父・柏・銚子・勝浦・富崎・館山・東京・八丈島・横浜・横須賀・沼津・松本・甲府・浜松),ならびに東京帝国大学による5観測点(本郷・一ツ橋・筑波・鎌倉・三崎(油壷))と対比される69観測点を対象として,気象庁検測値(1923年~2011年)中のS-P時間ならびに初動の分布を整理した.また,同様に19の首都圏地震観測網(MeSO-net)あるいは既存観測点で検測された3,086地震(2008年4月1日~2012年6月5日)に対するS-P時間・初動を整理した.本研究で整理したS-P時間・初動は,計器観測時代初期に発生した顕著地震に対するそれらとの比較から,震源・発震機構解の推定あるいは類型化に活用が期待される.本研究ではその一例として,茨城県南西部,千葉県北西部ならびに浦賀水道付近の地震に対する各観測点でのS-P時間と初動の特徴を整理し,1921年茨城県南西部の地震(M7.0)ならびに1922年浦賀水道付近の地震(M6.8)に対するS-P時間・初動と対比した.茨城県南西部にはフィリピン海プレート(PHS)と太平洋プレート(PAC)の沈み込みに伴うプレート間地震が活発なクラスターが存在するが,1921年茨城県南部の地震に対する初動はこれらの地震に対する発震機構解と不調和である.また,1922年浦賀水道付近の地震に対する初動ならびにS-P時間と,近年の地震に対するそれらとの比較から,1922年の地震は千葉県南西部から浦賀水道に至る一帯で発生した,横ずれ型の発震機構解を持つPHS内部地震であった可能性が示唆された.日本における近代計器観測は1870年代半ばに始まり,煤書きの波形記録や検測値,被害記録等が収集・保管されている.その後の焼失等のため不完全ではあるものの,これらは計器観測時代初期に発生した地震に関する貴重な資料として地震像の解明に活用されてきた.計器観測時代初期に発生した地震の震源・発震機構解の推定あるいは類型化は,気象庁による震源カタログ(1923年1月14日~)以前の地震活動を議論するうえで重要な課題であり,特に関東地方はこの時期,1923年大正関東地震(M7.9)発生前の数十年間にあたる.しかしながら,近年の地震に対する震源・発震機構解の推定手法をそのまま計器観測時代初期に発生した地震に適用するにはいくつかの困難が伴う.稠密観測網が構築された近年に発生した地震に対するS-P時間や初動と比較することで,計器観測時代初期に発生した地震の震源・発震機構解を従来よりも高精度で推定できる可能性がある.謝辞本研究では気象庁総合検測値ならびに首都圏地震観測網(MeSO-net)検測値を使用させて頂いた.また防災科学技術研究所によるF-netモーメントテンソル解,ならびに気象庁によるメカニズム解を使用させて頂いた.射出角・方位角の計算にはHASHv2(Hardebeck and Shearer, 2002)を使用させて頂いた.ここに記して感謝する.なお本研究は文部科学省受託研究「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト」の一環として実施された.