14:15 〜 14:30
[MIS21-12] 河川生態系の生産基盤を明らかにするクロロフィル同位体指標の開発
キーワード:付着藻類, 光合成色素, バイオマーカー, HPLC, 安定同位体比
陸域・水域エコトーンとしての河川生態系において、河床礫表面に付着する藻類(以下、付着藻類)は、多様な生物群集を支える重要な一次生産者である。しかし、付着藻類から食物連鎖(生食連鎖)を通じて転送されるエネルギー流を正確に見積もった研究例はこれまでにない。なぜなら、河川生態学者が長年「付着藻類」と見なしてきたものは、実はさまざまな有機物の混合した「バイオフィルム」だからである。本研究は、バイオフィルムから藻類のバイオマーカーであるクロロフィル類を抽出し、各種同位体比を測定することで、河川一次生産者(藻類)に由来するエネルギー流を追跡することを目的とする。そのために我々は、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いてバイオフィルムからクロロ色素・フェオ色素を単離・精製し、安定同位体比質量分析計(EA/IRMS)を用いて炭素・窒素安定同位体比(δ13C・δ15N)を測定した。本発表では、バイオフィルム全体(バルク)や藻類専食者(例:Epeorus latifolium: カゲロウ幼虫)のδ13C・δ15N測定と合わせ、いくつかの河川で行った予備的な結果を報告する。さらに、これまで河川や他の水域生態系の食物網研究で用いられてきた、安定同位体マップとの違いについても議論したい。