日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22_29PM1] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2014年4月29日(火) 14:15 〜 16:00 213 (2F)

コンビーナ:*戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター)、森田 澄人(独立行政法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門)、座長:八久保 晶弘(北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター)、戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)

15:30 〜 15:45

[MIS22-06] 足摺海丘からの海水中のメタンプルーム分布を利用したメタン放出量の推定

*原 修一1角皆 潤1小松 大祐1芦 寿一郎2中村 光一3砂村 倫成4中川 書子5土岐 知弘6 (1.名大院・環境・地環、2.東大海洋研、3.産総研、4.東大院・理・地惑、5.北大院・理・地惑、6.琉球大・理・海洋自然)

メタンは還元環境下の深海底堆積物中に広く分布しており、地球上の主要な炭素リザーバーの1つとなっている。その量はハイドレート化したものだけで大気中のメタンの約3000倍かそれ以上と言われており(Kvenvolden, 1988)、例えその一部でも大気中へ漏出すると、気候への影響が無視できない。したがって海底下にハイドレート等として胚胎されたメタンが海水中でどのように挙動するのか、特に海水を通過し大気まで到達している可能性がないかどうかを検証することは、過去及び未来の急激な気候変動を考察するうえで極めて重要である。高知県沖の足摺海丘(32°29’N, 133°37’E)は、東北東-西南西方向に伸びた形状を示し、山頂の水深は543mしかない。足摺海丘およびその周辺海底では、物理探査によってBSRの分布が広く確認されている他、この海丘直上の海水中ではメタンの高濃度異常も観測されていて、この海丘から海水中にメタンが放出されているものと考えられいる。本研究では、海底下の移動から湧出、プルーム形成に至るメタンの挙動や、足摺海丘からのメタンの湧出フラックス、さらに大気へのメタン漏出の可能性の有無を検討することを目的として、2013年9月に足摺海丘およびその周辺において海水試料を採取し、海丘直上及び周辺海水中のメタン濃度分布を定量化した。更にメタンの炭素・水素安定同位体比も同時に分析し、その成因が微生物起源か、それとも熱分解起源であるのか、また海水中における微生物酸化分解の有無に関する考察を行った。分析の結果、足摺海丘直上の試料から高濃度のメタンが検出された(最高145 nmol/L)。また海水中のメタン濃度分布から、海丘から見て北東の方向の水深450 m~660 mの範囲に、メタンプルームが広がっていることが分かった。これは、足摺海丘頂上の深度と一致するため、足摺海丘頂上付近が放出源となり、そこから水平方向にプルームが広がっているものと考えられる。しかしながら、足摺海丘直上のメタンの安定同位体比と北東方向に広がっているメタンプルームの安定同位体比は、周辺海水の寄与を補正しても一致しなかった。足摺海丘から放出されるメタンの一部は、海水中に拡散していく過程で微生物によるメタンの酸化分解を受けている可能性がある。一方メタンの鉛直プロファイルから、湧出するメタンが定常的に大気へ放出されている可能性は低いことも明らかとなった。また、濃度分布から算出された海底下からのメタン放出量は、新潟上越沖メタンハイドレート露出域からの放出量と同程度であることや、湧出するメタンは、熱分解起源である可能性が高いことが明らかとなった。