日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22_29PM2] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2014年4月29日(火) 16:15 〜 17:30 213 (2F)

コンビーナ:*戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター)、森田 澄人(独立行政法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門)、座長:森 大器(九州大学大学院比較社会文化学府)

17:15 〜 17:30

[MIS22-P03_PG] 東部南海トラフ第二渥美海丘のタービダイトチャネル複合体におけるメタンハイドレート貯留システム

ポスター講演3分口頭発表枠

*小松 侑平1藤井 哲哉1鈴木 清史1 (1.独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

キーワード:ガスハイドレートシステム, シーケンス層序学, 海水準変動, 海底チャネル, 堆積相

東部南海トラフ第二渥美海丘では,地震探査および坑井データの解析によって,メタンハイドレート (以下MH ) の濃集帯が確認されており (藤井ほか,2009),2013年に第1回海洋産出試験が行われた.このMH濃集帯の集積タイプは堆積層の分布に規制される層序規制型とされており,石油地質学でいうところの層位トラップに相当すると考えられる.しかし,MHの集積に大きく寄与すると考えられる岩相分布や泥岩のシール能力といった,具体的な地質・堆積学的なプロセスやその規制要因については,まだ十分に議論されていない.
本研究では,第二渥美海丘に発達する中部更新統小笠層群相当層のタービダイト堆積物を対象に,物理検層,コア分析などの情報を用いて詳細な堆積相解析およびシーケンス層序区分を行うことによって,正確な層位トラップの分布予測をし,MH の貯留システムについて検討した.
検討対象としたタービダイト堆積物は,主に粘土質~砂質シルトと極細粒~細粒砂の互層からなり, 下位より層厚30-300 m の7つの堆積サイクルが認められる.各サイクル内部は大局的には下部から上部にかけて砂層が上方薄層化していく塁重様式を示し,その岩相変化の周期はコアから得られた酸素同位体比カーブ (山崎ほか,2011) の周期と一致する.加えて,第二渥美海丘の砕屑物供給上流側にあたる濃尾平野に分布する中部更新統の層準は氷河性海水準変動に伴って形成されたことが明らかにされており,本研究で認められた堆積シーケンスと対比可能である.以上のことから,これらの7つの堆積サイクルは,主に氷河性海水準変動に起因する第4~5オーダーシーケンスに相当し,それらの累重がより低次オーダーの堆積シーケンスを構成すると考えられる.海水準低下期~低海水準期堆積体と解釈されるMH貯留層は,下位より癒着チャネル堆積物,マッドドレープ堆積物,非癒着チャネル堆積物,半遠洋性泥質堆積物より構成される.これらのサクセションはサイスミックファシス解析によって,南西方向の古流向を示すタービダイトチャネル複合体と解釈され,全体として第二渥美海丘側である南方向へ泥質化する.貯留層の上位には,数十 m 厚の泥質堆積物が発達し,これが有孔虫微化石の産出頻度のピークと一致することからコンデンスセクションと解釈される.第二渥美海丘では,このようなコンデンスセクション泥質堆積物を境に飽和率の異なるMH層が分布していることから,同泥質堆積物は,帽岩として優秀なシール能力を有していると考えられる.
これらの特徴から,第二渥美海丘のMHのトラップ形成において,コンデンスセクション泥質堆積物がシールとなり,それらの直下のタービダイトチャネル複合体が貯留層となることが明らかとなった.また,貯留層を形成するチャネル複合体の位置が構造翼部付近にあり,構造上位への砂岩せん滅方向が堆積物供給方向と斜交~直交することから,側方へのメタンの移動をシールする能力も有していると考えられる.得られた解析結果は、堆積盆シミュレーションの入力データとして利用する予定である。