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[MIS23-06] 仙台湾海底コアから推定される2011年東北地震津波の浅海域堆積過程
近年,陸上への遡上津波の堆積物についての研究が盛んになされる一方,浅海域における津波の堆積物についての理解はほとんど進んでいない.2011年東北地震津波による浅海域の津波堆積物とその多様性の特徴を探るため,我々は2012年8-9月に仙台湾の44箇所においてバイブロコアリングを行った.津波堆積物の識別は,放射性核種濃度と生物擾乱の程度に基づき行った.識別可能な場所では,津波堆積物の層厚は10-50 cm程度である.仙台湾の底質は,下部外浜で中-細砂,内側陸棚で極細砂-粘土,沖合では淘汰が悪く礫-泥と変化に富んでいる.津波堆積物の粒度は各掘削点の元の粒度と似ており,各領域間で堆積物が大きく移動したわけではないことが示唆される.下部外浜のコアには,塊状の黄色い粗粒砂層が見られるものがあり,これは津波の引き波で運搬された海浜砂から成ると考えられる.内側陸棚の津波堆積物は,陸上の津波堆積物でも一般に知られる多重級化層を示す傾向がある.これらの特徴は,浅海域において津波堆積物を識別するために重要であるが,より包括的な尺度を確立するには,様々な地域における同様の調査が必要であろう.