日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23_2AM2] 津波堆積物

2014年5月2日(金) 11:00 〜 12:45 415 (4F)

コンビーナ:*後藤 和久(東北大学災害科学国際研究所)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)、西村 裕一(北海道大学大学院理学研究院)、座長:西村 裕一(北海道大学大学院理学研究院)

12:30 〜 12:45

[MIS23-14] 日本海溝沿いで発生した津波地震の規模推定 ―1677年延宝房総沖地震津波の再評価―

*柳澤 英明1後藤 和久2鈴木 慶太1金丸 絹代3菅原 大助2柳澤 緋奈子2橋本 康平2岩本 直哉4高森 良文5 (1.東北学院大学、2.東北大学、3.関西大学、4.銚子ジオパーク、5.銚子市教育委員会)

日本海溝沿いの巨大地震発生領域では,顕著な地震の揺れを伴わないものの,巨大な津波を発生させる"津波地震"の存在が知られている.1677年(延宝)に千葉県房総沖で発生した地震は,地震の揺れ自体は大きいものではなかったが,巨大な津波を発生させ,500名以上もの人命を奪った.この津波は,"津波地震"によって発生したものと推定され,古文書調査に基づく古津波規模の推定が進められてきた.しかしながら,古文書の記述には不正確な情報も多く,古文書調査のみからでは十分な精度で津波規模を推定することは難しい.そこで本研究では,古文書の整理に加え,津波堆積物調査,数値シミュレーションを合わせ,総合的に解析を進めることで,古津波規模の推定を実施した.古文書に津波の到達が記載されている千葉県銚子市小畑池において津波堆積物調査を実施した結果,津波で堆積したと思われる砂層を湖底より発見した.C14年代測定および火山灰分析より,この砂層は西暦1100年~1700年頃に形成したものと推定され,1677年延宝房総沖地震津波によって堆積した可能性が高いと考えられる.本研究ではさらに,津波堆積物に基づいて数値シミュレーションを実施した結果,1677年延宝房総沖地震津波を再現するには,M8.34以上の地震が発生する必要であることがわかった.この規模は,1896年明治三陸地震津波の規模とほぼ一致する.明治時代以降に日本海溝沿いで発生した"津波地震"は,1896年明治三陸地震津波のみであり,1677年延宝房総沖地震津波の評価は,日本海溝沿いで発生する”津波地震”の規模を推定する上で有効な情報となる.