18:15 〜 19:30
[MIS25-P03] オマーンオフィオライトWadi Hilti地域における後期白亜紀遠洋性堆積物の層序と形成過程
キーワード:オマーンオフィオライト, 遠洋性堆積物
オマーンオフィオライトは,下位からマントルかんらん岩,斑れい岩,シート状岩脈群および噴出溶岩層から構成される.このうち噴出溶岩層は,化学組成の検討により,異なるセッティングで形成されたことが推定される3つの溶岩ユニットに分類されている(Ernewein et al., 1988).すなわち,N-MORBに類似するV1溶岩,沈み込み帯の火成活動によるV2溶岩およびプレート内火成活動により形成されたV3溶岩である.これらの溶岩ユニットの間には,遠洋性堆積物が存在する.遠洋性堆積物については,Wadi Jizzi地域においてメタリフェラス堆積物と細粒な遠洋性堆積物がスヘイラ層(Fleet and Robertson, 1980),その上位の礫岩層がザビアト層(Woodcock and Robertson, 1982;Robertson and Woodcock, 1983)と命名されている.スヘイラ層については,Tippit et al. (1981)により後期白亜紀Cenomanian~Santonian?の放散虫化石が報告されている.
オマーンオフィオライトの北部に位置するソハールの南西約25 kmの地域には,V2およびV3溶岩が広く分布している(以下,Wadi Hilti地域と呼ぶ).V2溶岩上には最大で層厚50 mほどの遠洋性堆積物が見られ,それらはV3溶岩に覆われる.また,V3溶岩の内部にも堆積物が挟在する.最近,V3溶岩の噴出・定置様式が詳細に検討され,その具体像が明らかにされた(Umino, 2012).このような背景において,堆積物の年代を明らかにすることは,V2溶岩の活動終了時期,V3溶岩の噴出時期を知る上で重要となる.本講演では,Wadi Hilti地域の遠洋性堆積物の岩相層序と年代,形成過程の検討結果について報告する.
Wadi Hilti地域における遠洋性堆積物について複数のセクションで検討した結果,V2溶岩の上位には,メタリフェラス堆積物,ミクライト質石灰岩,赤色泥岩,礫岩,V3溶岩および珪質泥岩の順で累重することが明らかになった.特にWadi Hilti地域においては,溶岩やチャートの礫を含む礫岩層を初めて確認した.このような堆積物の放散虫化石を検討した結果,V2溶岩上およびV3溶岩上の堆積物ともにRhopalosyringium scissum O'Dogherty,Hemicryptocapsa polyhedra Dumitricaを含む同様な群集が得られた.O'Dogtherty (1994)によれば,R. scissumの初出現はTuronianの基底付近であり,Turonianを示すと考えられる.また,254セクションの珪質泥岩(礫岩中のブロックと考えられる)からは,Guttacapsa biacta (Squinabol)およびRhopalosyringium petilum (Foreman)などが産出した.O'Dogtherty (1994)によれば,これらの共産する期間はCenomanian中期~後期である.これらの年代からWadi Jizzi地域とWadi Hilti地域の遠洋性堆積物を対比すると,Wadi Hilti地域のV2溶岩上の細粒な遠洋性堆積物はTuronianであり,Wadi Jizzi地域のスヘイラ層に対比できる.254セクションを含めた礫岩層およびV3溶岩上の珪質泥岩もTuronianであり,ザビアト層に対比できる.
以上の岩相層序と年代から,Wadi Hilti地域のV2溶岩の噴出終了時期はTuronianで,V3溶岩の噴出時期についてもTuronianに噴出したといえる.V2溶岩が噴出した沈み込み帯のセッティングから,V3溶岩が噴出した衝上初期段階への変化は,Turonianにおける短期間で起こったことが明らかになった.
オマーンオフィオライトの北部に位置するソハールの南西約25 kmの地域には,V2およびV3溶岩が広く分布している(以下,Wadi Hilti地域と呼ぶ).V2溶岩上には最大で層厚50 mほどの遠洋性堆積物が見られ,それらはV3溶岩に覆われる.また,V3溶岩の内部にも堆積物が挟在する.最近,V3溶岩の噴出・定置様式が詳細に検討され,その具体像が明らかにされた(Umino, 2012).このような背景において,堆積物の年代を明らかにすることは,V2溶岩の活動終了時期,V3溶岩の噴出時期を知る上で重要となる.本講演では,Wadi Hilti地域の遠洋性堆積物の岩相層序と年代,形成過程の検討結果について報告する.
Wadi Hilti地域における遠洋性堆積物について複数のセクションで検討した結果,V2溶岩の上位には,メタリフェラス堆積物,ミクライト質石灰岩,赤色泥岩,礫岩,V3溶岩および珪質泥岩の順で累重することが明らかになった.特にWadi Hilti地域においては,溶岩やチャートの礫を含む礫岩層を初めて確認した.このような堆積物の放散虫化石を検討した結果,V2溶岩上およびV3溶岩上の堆積物ともにRhopalosyringium scissum O'Dogherty,Hemicryptocapsa polyhedra Dumitricaを含む同様な群集が得られた.O'Dogtherty (1994)によれば,R. scissumの初出現はTuronianの基底付近であり,Turonianを示すと考えられる.また,254セクションの珪質泥岩(礫岩中のブロックと考えられる)からは,Guttacapsa biacta (Squinabol)およびRhopalosyringium petilum (Foreman)などが産出した.O'Dogtherty (1994)によれば,これらの共産する期間はCenomanian中期~後期である.これらの年代からWadi Jizzi地域とWadi Hilti地域の遠洋性堆積物を対比すると,Wadi Hilti地域のV2溶岩上の細粒な遠洋性堆積物はTuronianであり,Wadi Jizzi地域のスヘイラ層に対比できる.254セクションを含めた礫岩層およびV3溶岩上の珪質泥岩もTuronianであり,ザビアト層に対比できる.
以上の岩相層序と年代から,Wadi Hilti地域のV2溶岩の噴出終了時期はTuronianで,V3溶岩の噴出時期についてもTuronianに噴出したといえる.V2溶岩が噴出した沈み込み帯のセッティングから,V3溶岩が噴出した衝上初期段階への変化は,Turonianにおける短期間で起こったことが明らかになった.