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[MIS28-10] 地磁気誘導電流に現れる準周期DP2変動
キーワード:中緯度地磁気誘導電流, 中緯度磁場D成分, 赤道ジェット電流, 地面電離圏導波管TM0モード波
GIC(Geomagnetically induced current)は地磁気南北成分Bxの時間変化による誘導電流と理解されているが、北海道で測定されたGICが東西成分Byとよい相関関係にあることがWatari et al. [Space Weather 2009]により示された。一方、GICに日変化や季節変化のあることが報告され、太陽放射の影響を受けて日変化や季節変化する電離圏電流のリターン電流である可能性が指摘された[Braendlein et al., JGR 2012]。Braendlein et al. [JGR 2012]は、Kikuchi and Araki[JATP 1979]が提案したEarth-ionosphere waveguide(EIW)モデルを応用して、GICがTM0モード波が誘導する地面電流である可能性を指摘した。KA1979モデルによると、TM0モードの波面電流が地面電流と電離圏電流をつないでおり、地面電流は電離圏電流のリターン電流とみなすことができる。しかし、KA1979モデルは半無限長の導波管を仮定しているために、TM0モード波が光速度で低緯度方向へ伝搬する途中の過渡的な電流系を実現しているが、実際の電離圏電流やGICは準定常電流であり、準定常電流がTM0モード波の波面電流で結合するかどうかが課題であった。この問題を解決するために、Kikuchi[JGR 2014]は有限長伝送線理論を適用して、TM0モード波が高緯度と赤道の間を繰り返し伝搬することにより電流が時間とともに増加し、1秒から10秒程度の時定数を持って電離圏と地面に準定常電流を流すことを示した。本研究では、2006年12月14日に発生した太陽風磁場の周期変動に起因するDP2地磁気変動に伴うGICを解析し、Kikuchi[JGR 2014]のMIG(magnetosphere-ionosphere-ground)伝送線モデルが示すように、磁気圏から極域電離圏さらに赤道電離圏へ流入する電流のリターンとして中緯度GICを理解できることを示す。解析したDP2変動は2006年12月14日21-23UTの時間帯で発生し、周期40分の赤道ジェット電流EEJの振動を伴った。EEJの振動はIMFの周期振動に対応し、R1FACs(領域1型沿磁力線電流)とR2FACsが交互に赤道電離圏へ流入することで発生した[Kikuchi et al., JGR 2010]。EEJ振動は、午前に位置する中低緯度(Para Tunka, Memambetsu, Kakioka)の地磁気D成分の振動と正相関にあり、電離圏電流が高緯度から午前の中低緯度を経て赤道へ流入したことを示している。一方、北海道で測定されたGICは中低緯度地磁気D成分と正相関にあり、したがって、赤道EEJとも正相関にあることが明らかになった。この結果は、中緯度GICが地面電離圏導波管のTM0モード波の波面を経由して地面へ流入するリターン電流とみなすことができることを示している。また、磁気圏から地面まで電流が流れるMIG伝送線回路が現実に機能することを示している。