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[MIS30-14] 岐阜県中央部の石筍に記録された数千年スケールの変動
キーワード:石筍, 酸素同位体比, 後期更新世
岐阜県郡上市から採集した長さ13cmの石筍は,最終氷期の長いハイアタスを境に,上部が前期?中期完新世に,下部が Marine isotopic stage 3 (MIS-3) に形成したものである。組織的に均質で透明度が高い完新世の部分に対し,下部は全体的に褐色を帯びている。MIS-3と完新世の酸素同位体比の値を比較すると,M1S-3の方が0.5-1.0パーミルほど高い。この差は中国南部の石筍と同等であり,岐阜県の石筍記録が夏期モンスーンの強い影響を受けていることを示唆する。この石筍で最も顕著な特徴は下部に認められる幅約1 cmの周期的変化である。下部石筍が連続的に沈殿したものであれば,U-Th年代により56-35 kaに堆積したものと見積もられ,その中に合計8回の周期が認定される。これは日本海堆積物に記録された暗色層の出現頻度と一致する。1つの周期の中で,方解石は上方へとゆるやかに透明度を増し,次の周期との境界で急激に褐色を帯びる。酸素同位体比も同様にゆるやかに増加し,次の周期との境界で急激に減少する。岐阜石筍に記録された数千年スケールの変動はダンスガード・オシュガーイベントに対応すると思われるが,グリーンランド氷床に明瞭に現れない50-43 kaの周期性もこの石筍には明瞭に現れている。この事は,ダンスガード・オシュガーサイクルの汎世界性を支持するとともに,その起源が必ずしも北大西洋の変動に関わっていなかったことを示唆する。岐阜石筍の酸素同位体比が主に降水量の変化を反映しているのであれば,ゆるやかな寒冷化の時期に降水量が減少し,急激な温暖化の時期に降水量が増加したことになる。石筍のU-Th年代は台湾国立大学の沈川洲教授の指導のもとで行った。