18:15 〜 19:30
[MIS30-P18] 珪藻遺骸群集を用いた鹿児島県藺牟田池における古環境復元
キーワード:珪藻, 完新世, 気候変動, pH変動, 火山灰層序, 年縞ラミナ
この研究は、年稿堆積物による環太平洋諸文明の高精度環境史復元の一部として行われているもので、環太平洋の環境システムの変動を高精度に復元するために,湖沼年縞堆積物を用いて,環太平洋環境史の高精度年代軸の確立と多様な環境因子の復元と人類活動の痕跡を検出することを目的としており、本研究の調査地である藺牟田池ほか数サイトでボーリング調査が行われている。藺牟田池においては、南日本における陸上古環境アーカイブとなるサイトかどうかを検証しており、藺牟田池の入戸火砕流堆積以降の環境変遷、具体的には、ボーリングコア中の珪藻を用いて、水深の変動、有機汚濁度の変動、pHの変動の復元を行った。
本研究調査地である藺牟田池は、鹿児島県北西部の標高300 mに位置する直径約 1 km の更新世中期に形成された火山性陥没湖であり、周囲を標高400 m~500 m前後の外輪山に囲まれている。池の西側の3分の1は、湿原化しており、多数の泥炭質の浮島が見られ、この浮島は国の天然記念物「泥炭形成植物群落」として指定されて、多くの植物が枯れて完全に腐らずに堆積し、南九州では稀な泥炭形成地としても知られている。絶滅危惧種であるベッコウトンボの生息地でもあることから 2005 年 11 月にラムサール条約登録湿地に登録された。
2011 年 2 月に藺牟田池の古環境調査のため湖底から 25 mのコア堆積物を採取した。コア試料は 平行オーバーラップ法を用いて第一掘削孔と近傍に第二掘削孔を設けオーバーラップさせながら互い違いにコア堆積物を採取した。第一掘削孔IMT11-1 では 73~90 cm のコア 20 本、第二掘削孔IMT11-2 では、IMT11-1 の欠落した部分をカバーするように 40~80 cm のコア 20 本を採取した。採取したコアは表層から深度7.6mまで泥炭層が続き、6 つのvisible tephraを挟んでおり、堆積年代を決定することができた。深度 7.6 m~13.0 mまでは湖成粘土・シルト層から成り、10.0 m~12.5 m には平行ラミナ構造が見られる。13.0 m以深 は、 入戸火砕流の再 堆積層と考えられている。本研究では、入戸火砕流堆積層以降の古環境変遷について、コア堆積物中の珪藻群集解析を行い、水深・有機汚濁・pHの変動を追うとともに藺牟田池の堆積過程を明らかにする。
試料は、過酸化水素を用いて、酸処理を行い、マウントメディアを用いて、封入し、永久プレパラートを作成し、検鏡(光学顕微鏡 倍率 1000 倍)による珪藻群集の同定・カウントを行った。珪藻群集解析の結果、産出する珪藻群集を生息環境ごとのグループに分け、以下の環境を復元した。
【結果】
(1)深度 13.73 m~10.38 m 約30000年前~23400年前
珪藻がほとんど産出しない入戸火砕流の層であるため、古環境は復元できなかった。また、ラミナ層は年稿ではなく、別の成因である。
(2)深度 10.38 m~7.02 m 約23400年前~13600年前
浮遊性種・付着性種・底生種の珪藻が多数産出し、また、好汚濁性種も好清水性種の割合も多く、破片率も高かったことから、流れ込みのある環境であったことが推測される。また、池の端の水深が浅い部分では、湿地が存在していた。
(3)深度 7.02 m~6.02 m 約13600年前~10800年前
埋積により、池の端にあった湿地が陸地化したため、池水のpHは上昇した。
(4)深度6.02m~3.02m 約10800年前~4600年前
後氷期になり、降水量が増加したため、水位が増加した。7.3 kaのK-Ah噴火後、火山灰が池に堆積したため、水深は小さくなった。
(5)深度3.02m~1.63m 約4600年前~1500年前
Melosira arentii が大部分を占め、当時は、腐植栄養湖であり、池の西側で湿原化が始まった。
(6)深度1.63m~0.03m 約1500年前~現在
池の埋積が進み、水深が浅くなり、湿原の形成が進んだ。湿原が形成されたことにより、池水は酸性化したと推定される。
本研究調査地である藺牟田池は、鹿児島県北西部の標高300 mに位置する直径約 1 km の更新世中期に形成された火山性陥没湖であり、周囲を標高400 m~500 m前後の外輪山に囲まれている。池の西側の3分の1は、湿原化しており、多数の泥炭質の浮島が見られ、この浮島は国の天然記念物「泥炭形成植物群落」として指定されて、多くの植物が枯れて完全に腐らずに堆積し、南九州では稀な泥炭形成地としても知られている。絶滅危惧種であるベッコウトンボの生息地でもあることから 2005 年 11 月にラムサール条約登録湿地に登録された。
2011 年 2 月に藺牟田池の古環境調査のため湖底から 25 mのコア堆積物を採取した。コア試料は 平行オーバーラップ法を用いて第一掘削孔と近傍に第二掘削孔を設けオーバーラップさせながら互い違いにコア堆積物を採取した。第一掘削孔IMT11-1 では 73~90 cm のコア 20 本、第二掘削孔IMT11-2 では、IMT11-1 の欠落した部分をカバーするように 40~80 cm のコア 20 本を採取した。採取したコアは表層から深度7.6mまで泥炭層が続き、6 つのvisible tephraを挟んでおり、堆積年代を決定することができた。深度 7.6 m~13.0 mまでは湖成粘土・シルト層から成り、10.0 m~12.5 m には平行ラミナ構造が見られる。13.0 m以深 は、 入戸火砕流の再 堆積層と考えられている。本研究では、入戸火砕流堆積層以降の古環境変遷について、コア堆積物中の珪藻群集解析を行い、水深・有機汚濁・pHの変動を追うとともに藺牟田池の堆積過程を明らかにする。
試料は、過酸化水素を用いて、酸処理を行い、マウントメディアを用いて、封入し、永久プレパラートを作成し、検鏡(光学顕微鏡 倍率 1000 倍)による珪藻群集の同定・カウントを行った。珪藻群集解析の結果、産出する珪藻群集を生息環境ごとのグループに分け、以下の環境を復元した。
【結果】
(1)深度 13.73 m~10.38 m 約30000年前~23400年前
珪藻がほとんど産出しない入戸火砕流の層であるため、古環境は復元できなかった。また、ラミナ層は年稿ではなく、別の成因である。
(2)深度 10.38 m~7.02 m 約23400年前~13600年前
浮遊性種・付着性種・底生種の珪藻が多数産出し、また、好汚濁性種も好清水性種の割合も多く、破片率も高かったことから、流れ込みのある環境であったことが推測される。また、池の端の水深が浅い部分では、湿地が存在していた。
(3)深度 7.02 m~6.02 m 約13600年前~10800年前
埋積により、池の端にあった湿地が陸地化したため、池水のpHは上昇した。
(4)深度6.02m~3.02m 約10800年前~4600年前
後氷期になり、降水量が増加したため、水位が増加した。7.3 kaのK-Ah噴火後、火山灰が池に堆積したため、水深は小さくなった。
(5)深度3.02m~1.63m 約4600年前~1500年前
Melosira arentii が大部分を占め、当時は、腐植栄養湖であり、池の西側で湿原化が始まった。
(6)深度1.63m~0.03m 約1500年前~現在
池の埋積が進み、水深が浅くなり、湿原の形成が進んだ。湿原が形成されたことにより、池水は酸性化したと推定される。