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[MIS32-12] 断層近傍応力分布はどのように時間変化しているか
キーワード:応力, 断層, 原位置測定, 水圧破砕, ボアホールブレイクアウト, 孔内計測
断層帯掘削にともない,孔内計測による原位置測定によって,地震の発生に直接かかわる重要な物理量である応力が求められている(Ikeda et al., 1996a;Ikeda et al., 1996b;Ikeda et al., 2001; Tsukahara et. al., 2001; 小村他, 2004; Yamashita et al., 2004; Hickman and Zoback, 2004; Lin et al., 2007; Yabe et al., 2010; Yamashita et al., 2010; Yabe and Omura, 2011; Kuwahara et al., 2012; Ito et al., 2013; Lin et al., 2013).一度地震のおこった断層で,断層面の強度が回復し,断層に作用する応力が蓄積し,再度,地震が起こる,という地震サイクルでは,断層近傍の応力状態が,地震発生後どのように変化するのかは,将来の地震を予測するための重要な要因である.しかし,地震の再来期間が長いことがあるため,断層近傍の応力状態の時間変化を実地に検証することは困難といわれる.そこで,これまで,主に国内における原位置地殻応力測定で,断層近傍の応力分布の時間変化に関わる例を紹介し,孔内計測を時間をおいて繰り返し実施することにより,断層における地殻応力の時間変化を検証することを提案する.これまでの原位置応力測定のなかで,地震発生直後の測定には,1995年兵庫県南部地震の野島断層,1999 年台湾集集地震のチェルンプ断層,2011年東北地方太平洋沖地震震の源域先端部(海溝軸付近)の例がある.地震前の測定例では,地震調査推進本部による長期評価により,地震後経過率が1を越え,地震の迫っていると予想される糸魚川・静岡構造線断層帯牛伏寺断層と阿寺断層帯萩原断層の例がある.また,地震後の経過年数の異なる複数の断層の測定結果を並べて時間変化にした例として,根尾谷断層,阿寺断層,跡津川断層と,先に述べた野島断層,牛伏寺断層の例がある.さらに,断層からは距離が離れるが,鉱山の坑道を利用して,同じ場所で,時間をおいて繰り返し測定し,時間変化を直接測定した例もある.それらをみると,地震直後から,地震にいたるまで,応力は増加していることが示唆される.しかし,時間とともにどのように変化するのか,直線的に変化するのか,それとも地震直後ないし地震直前に急速に変化するのか,についてははっきりしない.断層近傍においても,地震の再来期間が非常に長いことを考慮しても,少なくとも,同じ地点で,時間をおいて繰り返し応力測定することが,必須の測定データになると考えられる.Hickman, S., and M. Zoback, 2004, Geophys. Res. Lett., 31, L15S12, oi:10.1029/2004GL020043Ikeda,R, K.Omura and Y.Iio,.H. Tsukahara, 1996a, Proc. VIIIth Int'l. Symp. on the Observation of the Continental Crust through Drilling, 30-35.Ikeda,R., Y.Iio and K.Omura, Y.Tanaka, 1996b, Proc. VIIIth Int'l. Symp. on the Observation of the Continental Crust through Drilling, 393-398.Ikeda, R., Y. Iio and K. Omura, 2001, The Island arc Special Issue. 10, Issue 3/4, 252-260.Kuwahara, Yasuto, Tsutomu Kiguchi, Xinglin Lei, Shengli Ma, Xueze Wen, and Shunyun Chen, 2012, Earth, Planets and Space, 64, 13-25.Lin, W., E.-C. Yeh, H. Ito, J.-H. Hung, T. Hirono, W. Soh, K.-F. Ma, M. Kinoshita, C.-Y. Wang, and S.-R. Song, 2007, Geophys. Res. Lett., 34, L16307, doi:10.1029/2007GL030515.Lin, Weiren, Marianne Conin, J. Casey Moore, Frederick M. Chester, Yasuyuki Nakamura, James J. Mori, Louise Anderson, Emily E. Brodsky, Nobuhisa Eguchi, and and Expedition 343 Scientists, 2013, Science, 339, 687-690.小村健太朗・池田隆司・松田達生・千葉昭彦・水落幸広,2004,月刊地球 号外No.46,127-134.Tsukahara, H., Ikeda, R. and Yamamoto, K. , 2001, Island Arc, 10, 261-265.Yabe, Yasuo, Kiyohiko Yamamoto, Namiko Sato, and Kentaro Omura, 2010, Earth Planets Space, 62, 257-268.Yabe, Yasuo and Kentaro Omura, 2011, Island Arc, 20, 160-173.Yamashita, Furoshi, Eiichi Fukuyama and Kentaro Omura, 2004, Science, 306, 261-263.Yamashita, F., Mizoguchi, K., Fukuyama, E. and Omura, K., 2010, J. Geophys. Res., 115, B04409-doi:10.1029/2009JB006287.