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★ [MIS33-02] 東北沖巨大地震の痕跡:大水深の海底堆積物から探る
キーワード:東北地方太平洋沖地震, 日本海溝, 海底堆積物
2011年の東北地方太平洋沖地震の地震性滑りは海溝軸まで達し、38°N付近では海溝先端にいくほど変位量が大きいというこれまでに観測例がないものであった。また海溝軸海底は地震により隆起したことが明らかになっている(Fujiwara et al. 2012)。さらに地震後の詳しい海底下構造が調べられ(Kodaira et al. 2013,Nakamura et al. 2013など)、上盤プレートが海側にせり出し、海溝堆積物をスラストアップさせた構造を作っていることが明らかにされている。Strasser et al. (2013)は採取された堆積物コアの記録を元に、地震時に先端部がスランプしたとし、Kawamura et al.(2012)やTsuji et al.(2013)も同様に海溝先端の海底変動を議論している。このように海溝軸まで地震性滑りが達する地震では、海底変動が海溝軸に近いほど大きく、変動の様子が海溝付近の地層に記録されている可能性が高い。その痕跡を読み解き、さらに過去に生じた巨大地震の特徴を明らかにすることを目指し、海溝底付近の海底堆積物を積極的に調査し始めている。2012年に、海洋地球研究船“みらい”を使い、38°N付近で隆起した海溝軸(水深7500m)の海底堆積物採取を行い、ドイツ調査船“ゾンネ”では、陸側斜面を含む海底堆積物採取を行った。海溝底の地形的高まりから採取されたコアの最上部数十cmは、2011年の地震による赤褐色のタービダイトで構成され、海溝軸に地震記録が残る事が確認できている。また下位には、何枚かのタービダイトが確認され、これは歴史地震に対応するものと考えられる。海溝軸沿い南北にも同様なタービダイトが認められるため、広くこれを追跡すれば、地震履歴をより詳細にできるであろう。一方、“ゾンネ”によって海溝近辺の陸側斜面から得たコアには海溝底の岩相と違い、デブライトや傾斜変形した構造が記録されており、上盤プレートの変動が記録されていると考えられる。2013年には海溝軸から一段高い、下部陸側斜面の平坦面(水深4000-6000m)で、“なつしま”を使い、広く海底堆積物採取を行った。採取された堆積物は多くの場合、薄い砂層を含むタービダイトで特徴づけられる。また表層崩壊の痕跡と考えられる流動変形した岩相を含むコアも採取されており、過去の地震との関連が注目される。このように海溝軸・下部陸側斜面平坦面では、地震に関連したと考えられるイベント層が見いだされている。海底堆積物中の東北地方太平洋沖地震を含む地震記録の時空間的広がりを把握することができれば、今まで得られなかった情報を抽出することができ、東北沖地震の理解が進むと期待している。本発表では、これまでの調査の結果概要を紹介し、巨大地震・津波のポテンシャル評価にどのように貢献することができるか考えたい。