日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS34_2PM2] 全球環境変動解明の鍵: 南大洋・南極氷床

2014年5月2日(金) 16:15 〜 17:00 414 (4F)

コンビーナ:*野木 義史(国立極地研究所)、大島 慶一郎(北海道大学北海道大学低温科学研究所)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、座長:大島 慶一郎(北海道大学低温科学研究所)、田村 岳史(国立極地研究所)

16:15 〜 16:30

[MIS34-08] ケイ藻ケイ酸殻の微量元素と南太洋のセディメントトラップ観測

*赤木 右1 (1.九州大学大学院理学研究院)

キーワード:ケイ藻ケイ酸殻, 微量元素, セディメントトラップ, 南太洋

近年、演者はセディメントトラップ試料の希土類元素の研究を通して、ケイ藻ケイ酸殻には、ケイ酸イオンの他に、①ケイ酸-金属錯体、②アルミノケイ酸塩をも吸収されることを明らかにした。そして、ケイ藻が希土類元素の海洋物質循環、アルミノケイ酸塩の可溶化に影響を与えている可能性を指摘した(Akagi, 2013; Akagi et al., in press)。そして、これらはネオジムの同位体比の観測結果と整合的であり(Akagi et al., in press)、ほぼ証明されたと考えている。世界の研究者に新たな知識として受け入れられるためには、ベーリング海は特殊海域と見なされる傾向があり、南太洋での研究が必要である。 ①のケイ藻ケイ酸殻が希土類元素を吸収するというアイデアは、希土類元素のケイ酸錯体をケイ藻が摂取する理論が海洋表面の希土類元素濃度を良く説明することから生まれた(Akagi, 2013)。この理論は、ベーリング海の調査では、②のケイ藻が同時に吸収するアルミノケイ酸塩粒子によって軽希土類元素のデータが乱され、その影響の少ない重希土類元素に適用が限られてきた。この理論は南太洋のように陸起源物質の混入が少ない理想的な海域で最もきれいに証明されるだろうと期待している。理論の完成には、南太洋のセディメントトラップ調査が求められる。  希土類元素の中のネオジムの同位体比は氷期-間氷期の変動と連動していることを考えると、ケイ藻は何らかの方法で海洋ネオジムの同位体比に影響を与えている可能性がある。この“何らかの方法”を明らかにすることは、ネオジムの同位体比変動を正しく捉えることに直結し、氷期-間氷期変動研究において最も中心的な意義と考えている。  ところで、海洋の微量元素化学においてケイ藻は全く考慮されていない。海洋において、2価の金属元素の一部と3価の金属元素のほぼ全てはケイ酸錯体で存在することが予想され、ケイ藻ケイ酸殻に効率的に吸収される可能性が高いと考えられる。南太洋においてケイ藻の役割を正しく理解し、他の元素の循環への影響を考察することも、研究の大きな意義である。Akagi, T., Fu F.-F., Hongo, Y. & Takahashi, K. (2011) Composition of Rare Earth Elements in Settling Particles Collected in the Highly Productive North Pacific Ocean and Bering Sea: Implications for Siliceous-Matter Dissolution Kinetics and Formation of Two REE-Enriched Phases. Geochim. Cosmochim. Acta. 75, 4857-4876. Akagi, T. Rare earth element (REE)-silicic acid complexes in seawater to explain the incorporation of REEs in opal and the “leftover” REEs in surface water. Geochim. Cosmochim. Acta. 113, 174-192 (2013).Akagi T., Yasuda S., Asahara Y., Tanimizu M, Emoto M. & Takahashi K. Diatoms spread a high εNd-signature in the Oceans. Geochem. Jour. in press.