日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS36_1PM1] 結晶成長における界面・ナノ現象

2014年5月1日(木) 14:15 〜 16:00 314 (3F)

コンビーナ:*木村 勇気(東北大学)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、塚本 勝男(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、佐藤 久夫(三菱マテリアル株式会社エネルギー事業センター那珂エネルギー開発研究所)、座長:野澤 純(東北大学金属材料研究所)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

14:15 〜 14:30

[MIS36-09] シュウ酸カルシウム一水和物(100)面上での氷核生成機構:分子動力学シミュレーション研究

*灘 浩樹1石川 雅也2越後 拓也3 (1.産業技術総合研究所環境管理技術研究部門、2.農業生物資源研究所、3.滋賀大学)

キーワード:結晶成長, 核生成, 氷, 有機鉱物, 計算機シミュレーション, シュウ酸カルシウム

シュウ酸カルシウム一水和物(Calcium Oxalate Monohydrate, COM)はシュウ酸カルシウム多形の中で熱力学的に最も安定である.COMは,地表,海底,大気中,隕石中,植物中,腎結石中などに存在する有機鉱物として知られている.これまで,COMは鉱物学や生物学,医学の分野における研究対象としてよく取り上げられてきた.最近,石川らの実験により,ヨウ化銀や氷核バクテリアと同じようにCOM が氷核物質であること,COM 結晶の(100)面が高い氷核性を示す面であることがわかってきた.COMの氷核生成促進機構の研究は,人工降雪剤の開発などとも関連して学問的にも実用的にも重要である.分子動力学(MD)シミュレーションは,分子レベルでの氷核生成促進機構を調べるにあたり最適な手段である.そこで我々は,COM(100)面による氷核生成促進機構を解明するためのMDシミュレーションを行った.シミュレーションにおいて,水分子間相互作用はSix-site modelを用いて計算した.水分子-COM間相互作用はTommasoらが提案するCOMモデルを用いて計算した.COMの<100>方向には,二つの異なる分子層が交互に積み重なっている.一つはカルシウムイオンとシュウ酸イオンからなる正に帯電したOx-1層で,もう一つはシュウ酸イオンと水分子からなる負に帯電したOx-2層である.シミュレーションは,Ox-1層とOx-2層に挟まれた過冷却水に対して実施した.温度は268 Kに設定した.合計で4 ns以上のランを実施した.シミュレーションは,Ox-2層周辺における極性立方晶氷構造の形成を示した.しかし,六方晶氷構造の形成は見られなかった.詳しいシミュレーション結果は講演時に示す.本研究は文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「融合マテリアル」(領域No. 2206,課題No. 22107004)の支援を受けて実施している.