日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT41_28PM2] 地球惑星科学における地図・空間表現

2014年4月28日(月) 17:06 〜 17:57 422 (4F)

コンビーナ:*小荒井 衛(国土地理院地理地殻活動研究センター地理情報解析研究室)、鈴木 厚志(立正大学地球環境科学部)、座長:小荒井 衛(国土地理院地理地殻活動研究センター地理情報解析研究室)、鈴木 厚志(立正大学地球環境科学部)

17:06 〜 17:21

[MTT41-P03_PG] モバイル端末アプリを用いた防災科研高感度地震観測網(Hi-net)モニタリング

ポスター講演3分口頭発表枠

*江本 賢太郎1齊藤 竜彦1上野 友岳1針生 義勝2那須 健一2汐見 勝彦1青井 真1 (1.防災科研、2.防災科研/地震予知振興会)

キーワード:Hi-net, モバイル端末, リアルタイム

地震現象をモニタリングすることは,地球物理学的な研究においてのみでなく,防災の面でも重要である.たとえば,地震の時空間分布を視覚的に把握することにより,日々の地震活動の変化の検出や余震の震源分布に基づく本震の断層面の推定等を行うことが出来る。また,緊急地震速報では,波動場をリアルタイムでモニタリングすることが必要である.このような事象を正しくモニタリングするためには,観測点やシステムの状態を常に正しく把握しておく必要がある.故障や異常のある観測点を把握していなければ,地震現象のモニタリング精度が低下や,間違った解釈につながる危険性がある.防災科研高感度地震観測網(Hi-net)では,約800個の高感度地震計が約20km間隔で日本全国に設置されており,波形はリアルタイムでサーバに蓄積され,自動処理解析で震源が求められている.本研究では,近年広く普及してきたモバイル端末アプリとしてHi-net観測点のリアルタイム状況と自動処理システムの効率的な表示アプリを開発し,観測網とHi-netシステムの自動処理状況を把握する手法を提案する.モバイル端末を用いることで,どこにいてもリアルタイムで状況を把握することが可能である.

 まず,Hi-net自動処理で求められた震源分布を表示するアプリを開発する.埋め込んだ地図アプリ上に震源分布を色と大きさで深さとマグニチュードを表現して表示させ,地図に隣接して分布深さ断面図も表示する.地図は任意の状況に拡大・縮小・回転ができ,それに合わせて断面図も更新する.これにより,様々な走向で断面を表示させることができ,沈み込むプレートや断層の傾きがわかる.また,範囲内に存在する地震の頻度分布図などを作成することにより,地震活動の統計的情報も把握可能である.震源分布の背景に過去の地震活動を表示することにより,過去にも同様の地震が起こっているか,プレート境界で発生した地震かどうかを知ることができる.

 次に,自動処理で取り残した地震があるかどうか,間違った場所を地震として検知していないかどうかの確認として,多観測点の波形トレースに震源情報を重ねて表示するアプリを作成する.Hi-netでは100トレース画像を公開している.これは全観測点から100観測点選び,その波形記録を並べて表示したものである.地震時には複数の観測点で振動が観測されるため,100トレース画像を見れば地震発生の有無,大まかな位置がわかる.この画像上にHi-net震源カタログの震央をプロットし,そこをタップすると横に日本地図上の位置と震源情報を表示させる.電子書籍のように1時間ごとの波形・震源情報がページとして表示され,過去に遡って確認ができる.これにより,自動処理震源決定が正しく機能しているかどうかがわかる.

最後に,Hi-net全観測点のリアルタイム記録を確認する管理者向けアプリを作成する.データが蓄積されているサーバから,ほぼリアルタイムでHi-net全観測点のデータを取得する.取得した速度記録から1秒のRMS振幅を計算したものを地図上に表示し,画像としてサーバに蓄積する.モバイル端末側でサーバに蓄積されたRMS値画像を1秒ごとに取得し,表示させる.これにより,Hi-net全観測点の現在の様子が一目で把握できるようになる.地震が起きていない平穏時にも常に大きな振幅を示している点といった故障している観測点がわかる.地震時には1秒ごとの波動場の広がりがわかり,隣接の観測点から大きく異なる挙動を示していれば,異常のある観測点として認識できる.異常のある観測点の情報を知るために,スワイプで画面を切り替え,マップアプリを読み込み,その上に観測点情報を表示させる.また,Hi-netではAQUAシステムと呼ばれる,震源・マグニチュード・メカニズム解を即時的に推定するシステムを運用している.地震発生時には,AQUA情報をモバイル端末側で取得し,1秒RMS値の地図画像に震央位置を重ねて表示させる.震源情報と観測される波動場と比較することにより,AQUAシステムで震源が正しく推定されているかどうかの判断も可能である.

 最初の2つのアプリを用いて,Hi-net自動処理システムでの誤決定や見逃しを空間的に把握する.また,群発地震発生時等,遠隔地でも統計情報を把握できるようにし,起動観測計画立案等に役立てる.3つ目のアプリで観測点状況を把握する.これら3つのアプリにより,波動場・波形・震源の統合した情報で観測網を管理する.