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[MTT42-10] 高緯度サンゴを用いた酸素同位体比とSr/Ca比の骨格成長量依存性の評価および水温復元
サンゴは過去数百年間の気候変動を季節単位で復元することが可能であるため、熱帯から亜熱帯域の詳細な気候復元に用いられている。近年の地球温暖化により、熱帯?亜熱帯に生息する造礁サンゴが北上し、日本列島の温帯域にも造礁サンゴが分布していることが確認された。したがって、これまで熱帯、亜熱帯域に限られていたサンゴ骨格気候学を適用し、より詳細な温帯域の長期気候値の復元可能性が出てきた。温帯域の造礁サンゴは地球温暖化や海洋酸性化の影響を敏感に反映し、骨格に記録していることが期待される。しかし、温帯域は熱帯?亜熱帯域とはSSTや気候が異なり、サンゴ礁の形成可能な下限水温といわれる18℃を下回るような低水温や大型藻類との競争など、サンゴにとって過酷な生息環境であるため、温帯サンゴのSST復元に用いられるSr/Ca比と酸素同位体比が水温をどのように骨格に記録するのか、検証する必要性がある。 本研究では、サンゴの北限に近い熊本県天草市牛深にて採取されたサンゴのSr/Ca比を測定し、先行研究で測定された酸素同位体比と比較することで、酸素同位体比よりもSr/Ca比は成長量に依存せず、より正確に水温を記録するプロキシであることが確認された。したがって、成長量が小さい温帯サンゴから水温を復元するには、Sr/Ca比の方が酸素同位体比よりも適していることが明らかになった。また、牛深にて採取した別のサンゴ2群体についてもSr/Ca比測定を行い、異なる群体による水温復元の違いの評価を行った。現段階では、1群体のみを使用して精度の良い水温換算式を作成するのは難しいが、複数群体用いて復元をすれば、温帯サンゴであっても観測水温と復元水温の差は約1℃におさまり、今後、温帯域の化石サンゴを用いて水温復元をするという古環境復元の利用の可能性が期待できる。