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[MTT44-02] ソーシャルメディアを通した環境調査インフラ構築手法の検討
キーワード:ソーシャルメディア, 環境調査, クラウドソーシング
はじめにスマートフォンの普及で誰もがいつでもどこでもネットワークサービスを利用できるようになる中,ソーシャルメディアは,コミュニケーションメディアとしてだけでなく,様々な社会現象や自然現象を知るセンサのひとつとして注目されている.多くの人が発信する情報を解析することで,低コストで,リアルタイムに,また人の感じ方など主観的な視点を含んだ情報収集が実現できるようになる.ソーシャルメディアに自発的に発信された情報を集めるだけでなく,積極的に情報発信を呼び掛け,集合知による調査を目指す参加型センシングも考えられている.もちろんこうした調査手法は研究途上であり,情報の信頼性や調査の確実性など,技術的,社会的な問題が数多く残っている.れでは,こうしたソーシャルメディアを通じた調査手法自体を研究したり,研究目的の調査の実施は可能であろうか.本稿では.その手法を検討する.Twitter等既存ソーシャルメディアの利用既にあるソーシャルメディアのデータをAPIを利用して取得し分析することで調査を実現する.北本による台風情報の試み[1]や,鉄道の混雑状況の調査[2]などの例がある.既に多くの利用者がいるため必要な情報を収集しやすいが,目的を持った調査を行ったり,条件を整えた情報収集などを実現するためには適さない.また,APIの利用に制限があり,大量のデータ収集が難しいなどの問題もある.専用アプリケーションの配布 情報収集機能を備えたアプリケーションを開発し,調査協力者に配布する手法が考えられる.特定の位置や時刻での情報収集を依頼したり,備え付けのセンサを利用するなど,スマートフォンの機能を最大限生かした情報収集が可能になる.その反面,協力者の確保のためにアプリケーションのインストールを呼び掛けたり,調査協力者自身の操作によりアプリケーションを起動し,調査を行う必要があるため,十分な規模や継続性のあるプロジェクトとするには多くの困難がある.他目的のアプリケーションの利用別の目的でWebサービスやアプリケーションを開発,運用している場合,そのユーザを対象に調査を行うことが出来る.ニコニコ動画再生中にアンケートを求めるニコ割アンケートが大規模な実施例だが,名古屋大学の河口らが開発,運営し160万ダウンロードされているスマートフォン向けアプリケーション「駅.Locky」でも,広告を通してアンケートへの調査協力を呼び掛ける実験などが行われている.一挙に全国の多人数の人に調査への参加を呼び掛けられるだけでなく,アプリケーション次第で,特定の状況を狙って調査を実施することも可能である.もちろん,こうした調査を実現するためには,対象地域に十分な規模の利用者が存在することが前提であり,一般的にこの手法を目指すのは困難である.クラウドソーシングサービスの利用インターネットを通じて業務の依頼が行えるクラウドソーシングサイトを利用し,情報収集を依頼することが考えられる.クラウドソーシングサイトでは,インターネットを利用する不特定多数の生産能力と依頼者の要求とをマッチングさせ,比較的安価に,小規模な業務を依頼できる.海外におけるパーソントリップ調査をクラウドソーシングサイトを通じて行った例が報告されている[3]が,データ収集の確実性やデータの信頼性にはまだ問題が残っている.おわりに以上,インターネットを通じて不特定から環境観測の情報を得て,環境調査を実現する手法を検討した.研究機関がこのような調査を行ったり,調査手法そのものを研究するためには,研究者の手の届く形で調査を実施することが望ましい.しかしながら上に挙げたそれぞれの手法はすぐに実現することは難しい.さらに,情報の信頼性や発信者のインセンティブなど,調査手法として活用するためには未解決の問題も多い.そのため,今後この分野の研究を,理論と技術両面から深めてゆく必要がある.参考文献[1] 北本 朝展, "気象現象を対象としたソーシャルメディアの取材・分析・可視化手法", 日本地球惑星科学連合2012年大会, No. MTT38-05, 2012年05月.[2] ナビタイムジャパン, "電車混雑リポート", http://www.navitime.co.jp/?ctl=0171.[3] 杉森純子, 関本義秀, 金杉洋, 大伴真吾 "クラウドソーシングサイトを用いた海外における簡易的な人の流れ調査の試み", 21回地理情報システム学会研究発表大会, F-4-2, 2012年10月.