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★ [O01-04] 都市災害
キーワード:都市災害, 災害の進化, 相転移
要約 災害は進化する。とくに、都市が成長するにつれてそこで起こる災害の特徴は社会とともに変化する。そして、巨大都市になれば被害がますます危険性が大きくなり、相転移現象によって未曾有とならないように、減災レジリエンスで対策を準備しなければならない。1.進化する災害と相転移現象 都市で起こる災害は、進化すると考え対策を立てなければならない。都市で起こる災害は、都市化災害、都市型災害、都市災害、スーパー都市災害というように進化する。都市化災害とは、現在の多くの途上国の大都市のように、人口流入に対して社会基盤整備が追い付かない状態で起こる災害である。わが国では、1972年大阪府で起こった寝屋川の氾濫災害(大東水害)が代表である。都市型災害は別名、ライフライン災害と呼ばれ、1978年宮城県沖地震が最初である。仙台市のライフラインに大きな被害が出た。都市災害は、1995年阪神・淡路大震災である。未曾有の人的・物的被害が出た。スーパー都市災害とは、将来の首都直下地震のように、被害が未曾有になるがその過程がよくわからなくて、対処できない。さて、これらの都市の災害は予測可能的に変化するのであろうか。そうでれば、対策は難しくない。対策を量的に拡大すればよいからである。実際には、不連続に拡大しながら多種多様な被害が発生する。そのことを、災害の相転移現象と捉えることにしたい。水が温度上昇とともに固体の氷から気体のプラズマに不連続変化するのと同じように、都市の災害も変化すると考えるのである。それをもたらす最悪の被災シナリオを考えるのである。そして、都市防災とはそのシナリオが現実にならないようにすればよい。2.都市の災害脆弱性の拡大要因 最悪の被災シナリオを考えるときに、都市の脆弱性が何によってもたらされるのかを考えることは重要である。すべてを網羅することはできないが、図1にそれらをまとめて示した。急激な都市化と不適切な土地マネジメントとは、都市の進化とともに変わる。たとえば、都市化災害では、急激な都市化の進行である。しかし、スーパー都市災害では、海抜ゼロメートル地帯での拡大する地下空間の野放図な利用や地震危険地域での超高層ビルの建設などが指摘できる。4の社会インフラや公共サービスへの過度の依存では、スマホやインターネットを過度に利用した生活習慣や上水道の耐震化財源不足と水道使用料金の不均衡などが挙げられる。10の自治体の対応能力不足は、定員削減によって行財政改革を推し進めるsmall governmentの考え方は、企業に適用できても、もともとサービス事業である自治体に適用することは困難であることに気づかなければならない。水道事業や地下鉄事業を民営化するということは、防災・減災への投資が少なくなり、災害時の冗長性が少なくなることを考えれば、コストベネフィットの考え方の適用に限界があることがわかる。3.減災レジリエンスとコミュニティ減災 政府が進める国土強靭化は、減災レジリエンスと名前を変えるように主張した。なぜなら、コミュニティ減災を中心に自助と共助を中心に考える必要があるからだ。わかりやすい例として、密集市街地を考えてみよう。仮に、古い住宅を耐震補強しても、隣の古い住宅が全壊して火災が発生すれば、延焼は免れない。つまり、地域の建物がすべて耐震性がなければ駄目なのである。それを進めようとすれば、当然、共助の精神が必要である。これがコミュニティ単位で必要なことが理解できれば、進捗するだろう。現状は住宅所有者と行政との関係で進められており、これが原因の1つとなって少しも進んでいないといえる。つまり、自己責任の原則が理解されることが重要であることがわかる。まさに、都市防災とは、民主主義の成熟によって実現できるのである。4.まとめ 都市災害と都市防災を対として進めなければならない。いずれも時代とともに変化するということを念頭に置いて、実践性を高める必要がある。参考文献河田惠昭、「減災レジリエンス」を進化させ、コミュニティ減災を実現する、巻頭エッセイ、岩波「科学」、3月号、2014