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[O06-09] 海に浮かぶ博物館 天草ジオパーク構想
キーワード:島, 海, ジオパーク, ガイド
大小120もの島々で構成される天草諸島は、1億年という時間の記憶が刻まれ、生命の不思議を感じさせてくれる、まさに『宝』の島である。その島々で繰り広げられる人の営みによって独自の文化が育まれ、海と島の幸に恵まれた魅力ある天草。天草ジオパーク構想では、大地の遺産(地質・化石・地形)、生態系、そして人の歴史、石を使った文化、産業など、この地域を特徴づける5つの要素を柱と位置づけ、多くの人たちに知ってもらい、その保全と継承に力をいれている。 天草地域は白亜系から古第三系の堆積岩が広く分布し、多様な化石と化石燃料の無煙炭を産出する。堆積岩に貫入する流紋岩は変質を受け、「天草陶石」と呼ばれる良質の鉱石になり、九州地方を中心とする日本各地の陶磁器の原料を供給してきた。地域に残る信仰の対象として大地の遺産に関わる事例も多く、また、海に囲まれた島々はケスタ地形や「天草五橋」に代表される松島地域の多島海など、地質構造と岩石の分布に起因する風光明媚な地形つくりだしている。そして、我々はその地形をもつ島々により育まれた豊かな海の生命の恩恵をうけている。また、現場で活動するガイドは「ジオパークとはなにか」を的確に説明するジオパークの普及者であると共に、地域住民と一体になった取り組みまたは教育普及などに重要な存在といえよう。この構想ではこの大地の遺産に恵まれた島々の自然の保護と、そこに暮らす人々の文化を体験できる地域づくりを行い、地域振興や観光振興等を含めた総合的な展開を図るものである。 天草御所浦ジオパークは当構想地域の一部であり、平成10年からの「全島博物館構想」に基づき、化石を軸にした自然環境教育プログラムを設けるなど積極的に教育活動を行ってきた。日本ジオパーク認定後は地域住民と一体となったガイド活動や地域振興事業が活発となった。その結果、地域住民自ら大地の遺産を保護・活用する意識が高まり。そのことが交流人口の増加に繋がっている。天草ジオパーク構想は天草御所浦ジオパークで培った「御所浦効果」が天草全域に浸透することを期待し、天草の大地の遺産を活用する取り組みである。