18:15 〜 19:30
[PCG11-P08] 木星オーロラ観測用赤外カメラ搭載InSbイメージセンサ駆動システムの開発と評価
キーワード:赤外イメージセンサ駆動システム, 東北大学望遠鏡, 惑星長期観測, NASA 赤外望遠鏡
東北大学では, 2014年にハワイ・ハレアカラ山頂に設置される60cm望遠鏡のための赤外観測装置の開発を行っている。本研究は,木星赤外オーロラ用赤外カメラと赤外エシェル分光器に共通に用いられるFocal plane array(FPA)用の駆動システムを開発し,その詳細な評価・分析結果を用いて,観測対象毎に異なるFPAの最適動作条件を決定する手法を確立し,各観測対象の観測実現性を示すことを目的とする。
先行研究より,観測対象の時空間変動を明らかにする為には,H3+オーロラは撮像時間15sでS/N=15以上,H2オーロラでは撮像時間1200sでS/N=5以上,赤道域温度場については撮像時間7200sでS/N=5以上が必要であることを示した。この要求S/Nおよび撮像時間制限に基づいて,観測対象のシグナル成分,地球大気の発光成分,望遠鏡からの熱輻射を考慮し,FPAに要求されるノイズ指標,具体的にはリードノイズおよびリーク電流の上限値を明らかにした。
次に,本研究で採用している赤外FPAであるRaytheonのCRC463の駆動原理に基づき,本駆動システムでの適切なバイアス電圧範囲が,Vdet=-3.0V以下,Vdduc=-4.0V以上であることを明らかにした。この条件下で,バイアスVdet-Vdduc=0.6VにおいてFull Well(FW)が0.02Vから0.4Vに拡大し,ハロゲンランプの撮像に成功した。更に,次のような改良を行った。①赤外カメラの熱パスの伝導性を増大させることで,FPA近傍温度は45Kから20Kにまで下がり,リーク電流は17,145e/sから200e/s,リードノイズは453ermsから320ermsまで低減した。②CRC463特有の不具合を検証し,フレーム単位の新規制御方法を開発したことで,リードノイズは更に200ermsまで低減した。これに基づき,FPA制御回路系のクロック制御シーケンスの最適化を行った。本駆動システムの詳細な性能評価を行うことが可能となった。③FPA駆動回路系の改良として,各ボードの出力電位のノイズを低減し,最終的にリードノイズを90ermsまで低減した。
以上の改良により,Photon Transfer Curveの手法を用いて,FPAの性能パラメータを詳細に評価することが可能となった。その結果,バイアス0.6Vの場合では,Fixed Pattern Noiseの性能指標であるDark Signal Nonuniformityが3.8%, Photoresponse Nonuniformityが1.6%,リーク電流200e/s,Full Well 133,000e,システムゲイン10.9e/DNであることが明らかになった。FPA動作評価では,量子効率測定を行い,Raytheonが提示している値と同等の0.85の値を確認した。又,2.3μm,400KのNoise Equivalent Difference Temperatureを評価したところ,最大45mKであり,第3世代FPAと比較しても十分な性能を発揮できていることが明らかになった。なお,本研究で採用しているFPAはNASAのIRTFと同種のものであり,駆動系を含む撮像システムの性能を比較すると,リーク電流以外はIRTFの駆動システムに匹敵する性能であることが示された。
さらに,FW,リーク電流,システムゲインについて,それらのバイアス依存性を詳細に評価した。その評価結果を用い,観測対象毎の信号成分強度,雑音成分強度,最大撮像時間制限などを考慮し,観測対象毎に異なる最大S/Nを実現可能な最適バイアス設定を決定する手法を確立した。それにより,以下のことが明らかになった。本赤外FPA駆動システムにおいて,バイアス0.5Vで,H3+を露光時間15sでイメージング観測した場合の最大S/Nは30である。バイアス0.4Vで,H2を撮像時間1200sで分光観測した場合の最大S/N値は,ビニング処理した場合,最大S/N値3.14を達成するが,要求S/Nを下回る。この場合,リーク電流を81e/s以下に低減する必要がある。温度場分光観測の場合,バイアス0.4Vで28回加算を行うと,撮像時間7200sで最大S/N=52.7であるが,バイアス0.9Vでリーク電流を100e/s以下に低減すれば, 1回の撮像でS/N=40以上達成できる。
要するに本研究は,惑星観測のための東北大望遠鏡に組み合わされる赤外観測装置に搭載されるFPAの駆動システムを開発・改良し,その性能を詳細に評価し,その結果を用いて観測対象毎に最適バイアスを導出する考え方を示したものである。なお,現時点でのリーク電流はFPA本来のスペックと比較しても2桁程度大きく,この低減が今後の課題である。
先行研究より,観測対象の時空間変動を明らかにする為には,H3+オーロラは撮像時間15sでS/N=15以上,H2オーロラでは撮像時間1200sでS/N=5以上,赤道域温度場については撮像時間7200sでS/N=5以上が必要であることを示した。この要求S/Nおよび撮像時間制限に基づいて,観測対象のシグナル成分,地球大気の発光成分,望遠鏡からの熱輻射を考慮し,FPAに要求されるノイズ指標,具体的にはリードノイズおよびリーク電流の上限値を明らかにした。
次に,本研究で採用している赤外FPAであるRaytheonのCRC463の駆動原理に基づき,本駆動システムでの適切なバイアス電圧範囲が,Vdet=-3.0V以下,Vdduc=-4.0V以上であることを明らかにした。この条件下で,バイアスVdet-Vdduc=0.6VにおいてFull Well(FW)が0.02Vから0.4Vに拡大し,ハロゲンランプの撮像に成功した。更に,次のような改良を行った。①赤外カメラの熱パスの伝導性を増大させることで,FPA近傍温度は45Kから20Kにまで下がり,リーク電流は17,145e/sから200e/s,リードノイズは453ermsから320ermsまで低減した。②CRC463特有の不具合を検証し,フレーム単位の新規制御方法を開発したことで,リードノイズは更に200ermsまで低減した。これに基づき,FPA制御回路系のクロック制御シーケンスの最適化を行った。本駆動システムの詳細な性能評価を行うことが可能となった。③FPA駆動回路系の改良として,各ボードの出力電位のノイズを低減し,最終的にリードノイズを90ermsまで低減した。
以上の改良により,Photon Transfer Curveの手法を用いて,FPAの性能パラメータを詳細に評価することが可能となった。その結果,バイアス0.6Vの場合では,Fixed Pattern Noiseの性能指標であるDark Signal Nonuniformityが3.8%, Photoresponse Nonuniformityが1.6%,リーク電流200e/s,Full Well 133,000e,システムゲイン10.9e/DNであることが明らかになった。FPA動作評価では,量子効率測定を行い,Raytheonが提示している値と同等の0.85の値を確認した。又,2.3μm,400KのNoise Equivalent Difference Temperatureを評価したところ,最大45mKであり,第3世代FPAと比較しても十分な性能を発揮できていることが明らかになった。なお,本研究で採用しているFPAはNASAのIRTFと同種のものであり,駆動系を含む撮像システムの性能を比較すると,リーク電流以外はIRTFの駆動システムに匹敵する性能であることが示された。
さらに,FW,リーク電流,システムゲインについて,それらのバイアス依存性を詳細に評価した。その評価結果を用い,観測対象毎の信号成分強度,雑音成分強度,最大撮像時間制限などを考慮し,観測対象毎に異なる最大S/Nを実現可能な最適バイアス設定を決定する手法を確立した。それにより,以下のことが明らかになった。本赤外FPA駆動システムにおいて,バイアス0.5Vで,H3+を露光時間15sでイメージング観測した場合の最大S/Nは30である。バイアス0.4Vで,H2を撮像時間1200sで分光観測した場合の最大S/N値は,ビニング処理した場合,最大S/N値3.14を達成するが,要求S/Nを下回る。この場合,リーク電流を81e/s以下に低減する必要がある。温度場分光観測の場合,バイアス0.4Vで28回加算を行うと,撮像時間7200sで最大S/N=52.7であるが,バイアス0.9Vでリーク電流を100e/s以下に低減すれば, 1回の撮像でS/N=40以上達成できる。
要するに本研究は,惑星観測のための東北大望遠鏡に組み合わされる赤外観測装置に搭載されるFPAの駆動システムを開発・改良し,その性能を詳細に評価し,その結果を用いて観測対象毎に最適バイアスを導出する考え方を示したものである。なお,現時点でのリーク電流はFPA本来のスペックと比較しても2桁程度大きく,この低減が今後の課題である。