日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG38_1PM2] 惑星大気圏・電磁圏

2014年5月1日(木) 16:15 〜 18:00 423 (4F)

コンビーナ:*今村 剛(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部)、関 華奈子(名古屋大学太陽地球環境研究所)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、高橋 芳幸(惑星科学研究センター)、深沢 圭一郎(九州大学情報基盤研究開発センター)、中川 広務(東北大学 大学院理学研究科 地球物理学専攻太陽惑星空間物理学講座 惑星大気物理学分野)、座長:中川 広務(東北大学 大学院理学研究科 地球物理学専攻太陽惑星空間物理学講座 惑星大気物理学分野)

17:30 〜 17:45

[PCG38-P10_PG] ガリレオ探査機の観測に基づくガニメデ極域磁気圏のイオン加速の推定

ポスター講演3分口頭発表枠

*渡辺 真矢1加藤 雄人1熊本 篤志1小野 高幸1Kurth William S.2Hospodarsky George2 (1.東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻、2.Department of Physics and Astronomy, University of Iowa Iowa City, Iowa, USA.)

キーワード:Ganymede, magnetosphere, outflow, acceleration

ガニメデは木星の衛星の一つで、太陽系で唯一固有磁場を持つ衛星として知られている[Gurnett et al., 1996]。また、ガニメデは木星の磁気圏内を公転しているため、木星と共回転する磁気圏プラズマとの間で相互作用が生じ、ガニメデ周辺には磁気圏が形成されている。ガニメデ磁気圏の空間スケールは、木星磁気圏プラズマを構成するイオンのラーマー半径が無視できない程度であることから、特殊なプラズマ環境がガニメデ周辺に実現されていると考えられる。今日、ガニメデの磁気圏やプラズマ環境の研究は行われているものの、磁気圏とプラズマの相互作用やガニメデの磁気圏の様相には未解明の点が多く残されている。
本研究では、ガリレオ探査機の観測結果を用いてガニメデ極域のプラズマ環境を議論する。まず、Plasma Wave Subsystem (PWS)の観測結果からUpper-Hybrid Resonance (UHR) 周波数を同定することで、その場の電子密度を求めた。私達は、先行研究で行われていた軌道(G01, G02)に加え[Gurnett et al., 1996]、新たな軌道(G07, G29)での解析も行った。ガニメデ磁気圏で主要なイオン種である一価の酸素原子イオンの数密度がこの電子密度と等しいとし[Vasyliunas and Eviatar, 2000]、ガニメデ表面からの距離が264 kmから5262 kmまでの領域におけるイオン密度の高度分布を求めたところ、距離に伴って密度が顕著に減少する傾向が示された。次に、得られた高度分布に基づいて、ガニメデ磁気圏極域からのイオンの流失について考察した。まず、極域電離圏から磁気圏に向かってガニメデ電離圏起原のイオンが流出する過程において、イオン流出の経路上でフラックスが一定であると仮定した。観測された密度分布を冪乗の関数で近似して、断面積が距離の2乗に比例するとした場合と3乗に比例するとした場合に、フラックスを一定にするために必要な速度を求め、イオン流出速度の高度変化を推定した。その結果、密度は距離rに対してr^-5.98 で変化すること、高度500 kmにおける速度は断面積が距離の2乗に比例する場合は17.3 km/s、3乗に比例する場合は14.5 km/sに達すると見積もられることが明らかとなった。過去の研究ではVasyliunas and Eviatar, [2000]がG02軌道(高度264 km~2000 km)のPLSの観測に基づいてイオン流出速度を18 km/sと示した例がある。本研究の結果は、今までとは異なるアプローチでイオンの流出を指摘するものであると考えられる。本研究ではさらに、その流出プロセスを考察するための計算機シミュレーションを構築中であり、その進捗状況についても報告する。