日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM06_30PM2] Study of coupling processes in Sun-Earth system with large radars and large-area observations

2014年4月30日(水) 16:15 〜 18:00 312 (3F)

コンビーナ:*山本 衛(京都大学生存圏研究所)、小川 泰信(国立極地研究所)、野澤 悟徳(名古屋大学太陽地球環境研究所)、橋口 浩之(京都大学生存圏研究所)、座長:橋口 浩之(京都大学生存圏研究所)

17:15 〜 17:30

[PEM06-P14_PG] 衛星電波の大気伝搬特性を利用 した小型低軌道衛星ミッション に関する研究

ポスター講演3分口頭発表枠

*竹田 悠二1津田 敏隆1 (1.京都大学生存圏研究所)

キーワード:GPS電波掩蔽, 小型低軌道衛星, 全地球航法衛星システム, Kaバンド

本研究では、LバンドとKaバンドの電波による大気伝搬特性を利用した、新たな小型低軌道(LEO: Low Earth orbit)衛星ミッションの検討を行う。特に、GPS電波掩蔽法を用いることにより気温・水蒸気・電子密度等の高度プロファイルをラジオゾンデと同程度の高い分解能で観測することを考える。またKaバンドを利用によって、雲の含水量、及び水蒸気量を測定する放射計計測についても検討を行う。
GPS 電波掩蔽法では、受信機を搭載したLEO 衛星から見て電波の発信源となる衛星が、地球によって掩蔽される際、地球大気を掠めて伝播してくる電波をLEO 衛星で受信する。この時、伝播経路の屈折による遅延が起こるが時間とともに衛星同士の幾何学的配置が変化し、電波が通過する大気層の厚さが変わるにしたがい、遅延量が変化する。この遅延量を正確に測ることにより大気情報を測定する。しかし、従来はGPS衛星のみが、電波掩蔽観測に用いられてきたが、GPS衛星のみではなく他のGNSS(GLONASS、Galileo、北斗、QZSS) および通信衛星であるO3b をこの電波掩蔽観測に用いることにより掩蔽観測によるデータ取得の空間密度、および時間密度の増加を図る。
 本研究でLEO 衛星による大気観測手法の提案をおこなうにあたりGNSS による掩蔽観測のデータ分布について検討する。このデータ分布は、LEO衛星、各GNSS衛星の相対的な位置によって決まるので、時間的にも空間的にも非常に広範囲にちらばる。よって効率の良いミッションを提案するために、数値モデルによってデータ分布を調査し、LEO 衛星の軌道決定、アンテナ設計等を行った。数値モデルによると、GPSのみを使った電波掩蔽に比べ、他のGNSSおよびO3b衛星を電波掩蔽観測に用いれば、データ数は約3倍になり、非常に有用であることがわかった。経度に対するデータ分布は、LEO衛星の軌道に影響を受けず一様になるのに対し、緯度に対するデータ分布はLEO衛星の軌道傾斜角に影響を受けることがわかった。ローカルタイムに対するデータ分布は、LEO衛星の軌道傾斜角および昇交点赤経によって決められることも示した。
 また本研究ではKaバンドの電波を用いるO3b衛星を利用するのだが、KaバンドはLバンドの約10倍周波数が高い。GPS電波掩蔽では、Lバンドの電離層における遅延により、温度を測定することが出来る高度限界は約50kmとなっているが、周波数が高いほど電離層での影響を受けにくいためKaバンドによる電波掩蔽では高度限界の上昇が期待できる。さらに、電波が大気中を伝搬す際、その経路上で酸素や水蒸気、雲によって電界強度が減衰するのだがO3bで用いられるKaバンドのダウンリンク付近では水蒸気および雲による減衰はLバンドと違い大きく、酸素による減衰ではなく水蒸気、雲による減衰が支配的になる。よって、LEO衛星によってO3bの電波を受信する際、ダウンリンク内の異なる周波数の電波の、雲と水蒸気の減衰よって生じる信号強度の差の測定から雲の含水量、および水蒸気量を求めることが期待できる。