日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM32_2AM2] プラズマ宇宙:MHD現象,リコネクション,構造形成

2014年5月2日(金) 11:00 〜 12:45 503 (5F)

コンビーナ:*松清 修一(九州大学大学院総合理工学研究院流体環境理工学部門)、新田 伸也(筑波技術大学)、座長:星野 真弘(東京大学大学院理学系研究科)

12:00 〜 12:15

[PEM32-11] 動的ぺチェック・リコネクション

*草野 完也1中坊 孝司1三好 隆博2Vekstein Grigory3 (1.名古屋大学太陽地球環境研究所、2.広島大学大学院理学研究科、3.マンチェスター大学)

キーワード:リコネクション, ぺチェック・リコネクション, MHD, シミュレーション, スロー・ショック

磁気リコネクションは様々な高温プラズマにおける爆発的なエネルギー解放機構と考えられている。しかしながら、磁気レイノルズ数(S)が1010以上もある太陽コロナのような高磁気レイノルズ数領域におけるリコネクションの高速化メカニズムは未だに明確に説明されていない。観測によれば太陽フレアにおけるリコネクション率は10-2程度であると考えられているが、Sweet (1958)やParker (1963)による古典的な理論はリコネクション率がS-1/2で制限されることを示している。これに対してPetscheck (1964)はスローモード衝撃波を伴う高速リコネクションの定常解があることを理論的に示したが、その後の数値的研究によれば一様抵抗においてはPetscheckの解は安定に維持できないことが示唆されてきた。そのため、リコネクションの高速化には局所的な異常抵抗や非MHD効果が不可欠であると広く考えられてきた。 こうした背景のもと、我々は高精シミュレーションによって高磁気レイノルズ数領域(S~104-106)における一様抵抗MHDリコネクションの新たな高速化の可能性とそのメカニズムを探った。本研究では、Miyoshi and Kusano (2005)によるHLLDスキームを用いてハリス解によって与えられた電流層のこれまでにない高分解2次元MHD計算を実施した。 その結果、高磁気レイノルズ数領域にこれまでに知られていない新しい高速リコネクションの解が存在することを見出した。磁気レイノルズ数が104を超えるとセカンダリ・テアリングモード不安定によって電流層の中に複数のX点が形成され、多数の磁気島(プラズモイド)が形成される。我々はその後、磁気島が成長すると共にプラズモイド間の電流層がV型に分岐し、分岐電流層の頂点で電流密度が強化されリコネクションが高速化することを見出した。さらにこの分岐電流層はスロー・モード・ショックに発展することを明らかにした。その結果、リコネクション率は磁気レイノルズ数に関わらず0.05程度まで増加した。ただし、このスロー・モード・ショックは定常的に維持されず、プラズモイドの伝搬と共に生成と崩壊を繰り返すことが分かった。これらの結果は高磁気レイノルズ数領域では、一様抵抗下においてもSweet-Parker型の電流層からなる従来のプラズモイド・リコネクションは「動的ぺチェック型リコネクション」と呼ぶべき新しい高速リコネクションに遷移することを示している。この遷移機構の詳細を講演で議論する。