18:15 〜 19:30
[PEM35-P03_30] 相対論的プラズマシミュレーションにおける数値チェレンコフ不安定の特性とその抑制
キーワード:粒子シミュレーション, 相対論的プラズマ, 数値チェレンコフ放射, 衝撃波
相対論的な速度を持つプラズマを扱う際の有効な手法のひとつとして、PIC (Particle-In-Cell) シミュレーション法が知られている。本計算法では、電磁場はシミュレーション空間内に定義されたグリッド点に入れ子状に配置され、格子間隔や時間間隔は有限な値を持つ。その電磁場の標準解法として知られるFDTD法による数値シミュレーションでは、差分近似による数値分散が発生し、ナイキスト波数近くになるにつれ電磁波の位相速度は光速を下回る。そのため、相対論的な流れが支配する系を扱う際に、数値チェレンコフ放射と呼ばれる数値不安定性が発生することが知られている。この問題は相対論的なプラズマに対する数値計算における重要な問題の一つであり、様々な方面からアプローチがなされてきた。一つの方法として、数値分散がないマクスウェル方程式の解析解を与える擬似スペクトル法が挙げられるが、フーリエ空間で解く必要があるため、境界条件、超並列計算において大きな制約となるといった課題が残されている。一方、差分法による方法では電流に対するデジタルフィルタリングにより強制的に高波数領域を除去する方法が使われてきたが、これは物理的な波も同時に取り除いてしまうといった問題がある。しかし、近年、差分解法によるテストによって、特定のクーラン数において数値不安定の成長率が落ち、数値不安定性が抑制されるという結果が報告された (Vay et al., 2011, Godfrey & Vay, 2013) 。数値チェレンコフ不安定の分散関係が導かれ、成長率が特定のクーラン数において0となるためであると理解されている。また、この特定のクーラン数は電磁場の数値解法に依存することも明らかになっている。
本研究では、PICシミュレーションパッケージpCANSを用いて、数値チェレンコフ不安定の数値実験を行い、クーラン数による不安定の成長の特性を調べた。pCANSの特徴として、マクスウェル方程式を陽的なFDTD法に対して陰的な形で解いていることにあり、その違いによる特性の変化を調べた。数値実験では、pCANSの2次元コードを用いて、1方向に相対論的な速度を持ったプラズマを与え、励起された電磁場の波数空間上における特徴と時間発展から得られた線形成長率について、各クーラン数に対する依存性を調べた。その結果、クーラン数が1.0 の値をとるときに成長率が著しく 落ちていることが明らかになった。また、インプリシット数をα=0.5~0.51(α=0.5でクランク・ニコルソン法)まで変化させた結果、成長が抑制される範囲が0.9~1.0まで広がることが明らかになった。本研究によって、数値チェレンコフ放射の対処法の一つである、クーラン数を適切に選ぶことによる成長の抑制は、pCANSを用いた数値実験でも認められた。また、従来の結果において成長率の著しい低下はクーラン数が 0.5、0.7 のときに見られたが、pCANSで採用されている陰的スキームにおいては、この特徴がクーラン数が1.0のところで見られた。本公演では、上記の結果を踏まえた相対論的衝撃波への応用の結果も併せて報告する。
本研究では、PICシミュレーションパッケージpCANSを用いて、数値チェレンコフ不安定の数値実験を行い、クーラン数による不安定の成長の特性を調べた。pCANSの特徴として、マクスウェル方程式を陽的なFDTD法に対して陰的な形で解いていることにあり、その違いによる特性の変化を調べた。数値実験では、pCANSの2次元コードを用いて、1方向に相対論的な速度を持ったプラズマを与え、励起された電磁場の波数空間上における特徴と時間発展から得られた線形成長率について、各クーラン数に対する依存性を調べた。その結果、クーラン数が1.0 の値をとるときに成長率が著しく 落ちていることが明らかになった。また、インプリシット数をα=0.5~0.51(α=0.5でクランク・ニコルソン法)まで変化させた結果、成長が抑制される範囲が0.9~1.0まで広がることが明らかになった。本研究によって、数値チェレンコフ放射の対処法の一つである、クーラン数を適切に選ぶことによる成長の抑制は、pCANSを用いた数値実験でも認められた。また、従来の結果において成長率の著しい低下はクーラン数が 0.5、0.7 のときに見られたが、pCANSで採用されている陰的スキームにおいては、この特徴がクーラン数が1.0のところで見られた。本公演では、上記の結果を踏まえた相対論的衝撃波への応用の結果も併せて報告する。