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[PPS21-02] 対流とメルト移動を含むベスタの熱進化数値シミュレーション
小惑星ベスタは、地上で発見されるHED隕石ときわめてよく似た反射スペクトルを持ち、内部が分化していると考えられている。HEDとはホワルダイト、ユークライト、ダイオジェナイトの頭文字を取ったもので、エコンドライトの一種である。ユークライトは、地表付近において大きい冷却速度で固化したものであり、結晶の粒子の大きさに違いがある。ダイオジェナイトは、ユークライトよりも結晶が成長しており、より地下深くにおいて形成された岩石である。ホワルダイトは、ユークライトとダイオジェナイトが砕かれ、角礫化したものを言う。分化したということは、何らかの熱源によりベスタ内部の温度が上昇し、融点に到達した後メルトが生成され表面に移動したと推測される。DAWNの観測によって、ホワルダイト層が50~80㎞存在することが分かった。ここから、表面に噴出したメルト量はベスタ全球体積の約10~20%に相当する。ベスタが形成される初期太陽系には、太陽系内にガスや塵が多くあり、それが集積して惑星が形成されたと考えられている。26Alはベスタに含まれるAlのうち10ppmを占める。しかし、この値はベスタの形成時刻により変化する。26Alは放射性核種であるので、形成時刻が遅ければ遅いほど熱源は失われてしまう。M. Formisano et al.(2012)ではベスタの形成時刻を計算し、1Ma以内だと内部が完全溶融することを示した。しかしこの研究では、メルトの対流とメルト移動についての効果を考慮していない。これらの効果を加えると、ベスタが全球的に冷却されるはずなので、より多くの熱源が必要であることが予想される。そこで本研究では、メルトの対流とベスタ表面へのメルト移動の効果を考慮に入れてベスタ熱進化の数値シミュレーションを行った。ベスタ体積の10%のメルトが表面に噴出できるために必要な26Al量から、ベスタ形成時刻に対して制約を与える。一次元熱伝導方程式を完全陰解法を用いて数値的に解いた。数値シミュレーションにおいて、全てのメッシュにおいて生成したメルトは一定の割合a(0