日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS21_29AM2] 惑星科学

2014年4月29日(火) 11:00 〜 12:45 416 (4F)

コンビーナ:*奥住 聡(東京工業大学大学院理工学研究科)、黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、座長:洪 鵬(東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻)、大西 将徳(神戸大学大学院理学研究科)

12:15 〜 12:30

[PPS21-13] 地球型惑星の地表水分布と暴走温室限界

*新田 光1阿部 豊1大石 龍太2阿部 彩子2 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:暴走温室限界, GCM, 地球型惑星

液体の水は惑星気候に大きく影響を与える物質であることに加えて、生命の生存可能性を議論する上でも重要な物質である[e.g. Kasting et al., 1993]。この液体の水が地表に存在する惑星、すなわち水惑星は大きく3つのタイプに分類され、[1]海惑星(地表が全て海で覆われた、水量の十分多い惑星)、[2]部分海惑星(海と陸が存在するが、海はほぼ全て1つに繋がっている現在の地球のような惑星)、[3]陸惑星(水が南北両極域に局在化している、水量の少ない惑星)、と呼ばれている[Abe et al., 2013, Hawaii, Kona]。どのタイプに分類されるかは水の量、地形によって決まる地表水輸送と、大気循環による水蒸気輸送のバランスによって決定される。この地表の水は、ある閾値をこえる中心星放射を惑星が受け取った時、存在できなくなることが知られている。これは強い温室効果気体である水の正のフィードバックが原因で、このような状態を暴走温室状態と呼び、暴走状態に達する閾値については現在に至るまで数多く議論がなされている[e.g. Abe and Matsui, 1988; Nakajima et al., 1992; Leconte et al., 2013] 。ただし、陸惑星と海惑星との違いなど、地表水分布に依存した閾値の議論についてはあまり多くない。Abe et al. [2011] では、3次元モデルを用いて初めて陸惑星が再現され、暴走温室状態に陥る条件が計算された。その結果、地球サイズの惑星では、海惑星が相対太陽放射で130%程度の中心星放射を受け取ると暴走状態に陥るのに対し、赤道域の良く乾燥した陸惑星は170%の強度の放射を受け取っても地表の水分布は維持された。但し、ここでは限定的な陸惑星状態についての議論に留まっており、水分布の多様性とその影響については言及されていない。Takao [2013]では、南北1次元のエネルギーバランスモデルと鉛直1次元放射対流平衡モデルを組み合わせ、地表水の緯度分布と暴走温室限界の関係について計算が行われた。これによって、緯度方向の水の局在化の程度で暴走温室限界が異なることが明らかになった。しかし、この南北1次元モデルでは、経度方向の水分布についての議論はできない。また、力学的な大気循環による影響が考慮されていないという課題があった。そこで我々は、3次元モデルにより地球型惑星の地表水分布が暴走温室限界に与える影響を系統的に知ることを目的とし、3次元モデルとしてGCMを用いたモデル実験を行った。今回我々はCCSR/NIES AGCM 5.4g [Numaguchi, 1999]を用い、大気中の水蒸気循環を計算した。このGCMでは力学的な大気循環に加え、放射過程、雲形成過程などが計算されており、地球の大気循環、気候をよく再現している[Numaguchi, 1999]。但し、このGCMでは水の量や地形による地表水輸送を計算することが出来ない。そこで我々は地表水分布を境界条件として与えることで様々なタイプの水惑星を想定し、太陽放射を徐々に上げていき、暴走温室状態に陥らず地表の水が維持できる上限を求めた。緯度方向に水分布を与えて実験を行った結果、Takao[2013]と同様に、局在化の程度によって暴走温室限界に達する中心星放射の強度変化することが分かった。水が十分局在化した状況では180%の相対太陽放射でも地表の水が維持される一方、水分布が低緯度まで広がると、ハドレー循環による水蒸気輸送の効果により130%程度の放射でも暴走状態に突入した。また、経度方向に水分布を与えた結果、全球積分した水面積が等しくても、水分布が異なる場合は相対太陽放射で最大10%程度の違いが暴走温室限界に現れることが分かった。