17:00 〜 17:15
[PPS21-23] ヘイズを持つ低質量系外惑星の大気透過スペクトルモデル: GJ 3470bへの応用
キーワード:系外惑星, トランジット, 透過スペクトルモデル, 大気組成, ヘイズ
1995年に最初の系外惑星が発見されて以来、現在までに1000個以上の系外惑星の発見が報告されている。最近では、ひとつの惑星に対して、多波長でトランジット観測が行われるようになった。惑星のトランジット時に起きる恒星光度の見かけの減少から、その惑星の半径が分かる。また、測定された半径の波長依存性(これを大気透過スペクトルという)には、惑星大気中の分子やヘイズ、雲による吸収・散乱の情報が含まれる。従って、観測データと理論的な透過スペクトルモデルとを比較することにより、惑星大気の組成を制約できる。大気組成は、惑星の熱進化や形成過程などを考える上で重要である。これまでに、我々の観測グループは2つの低質量系外惑星(GJ 3470bとGJ 1214b)に対して多波長でのトランジット観測を行った。この2つの惑星とも、近赤外域に比べると、可視域で大きなトランジット半径が観測されており、このことから、ヘイズの存在が示唆されている。GJ 1214bについては、ヘイズを考慮した理論スペクトルモデルの系統的な議論がなされているが、GJ 3470bについては、まだなされていない。そこで、本研究では、トランジット観測がされるような中心星近くに存在する低質量惑星を想定し、その惑星が大気中にヘイズをもつ場合の理論的な透過スペクトルモデルを作成した。その上で、GJ 3470bとGJ 1214bにスペクトルモデルを適用し、その大気組成について議論する。理論スペクトルモデルの作成においては、惑星大気分子およびヘイズによる主星光の吸収・散乱と、化学平衡計算によって鉛直組成分布を考慮した。大気組成は、太陽組成、太陽組成からその重元素量やC/O比を変えたもの、水蒸気に富んだ大気などを考え、大気組成によるスペクトルモデルの違いを調べた。また、ヘイズの高度、粒径、数密度による違いについても調べた。実際の透過スペクトルの観測点とモデルとを比較し、惑星の大気組成について議論する際、カイ2乗検定を行ない、各大気モデルの妥当性を定量的に評価した。