日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS21_29PM2] 惑星科学

2014年4月29日(火) 16:15 〜 17:45 416 (4F)

コンビーナ:*奥住 聡(東京工業大学大学院理工学研究科)、黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、座長:黒川 宏之(名古屋大学大学院理学研究科)、葛原 昌幸(東京工業大学理工学研究科)

17:15 〜 17:30

[PPS21-24] SEEDS計画による太陽系外惑星や星周円盤の直接撮像探査

*葛原 昌幸1田村 元秀2工藤 智幸3橋本 淳4日下部 展彦5松尾 太郎6マクエルウィン マイケル7ジャンソン マーカス8高橋 安大2 (1.東京工業大学理工学研究科地球惑星科学専攻、2.東京大学大学院理学系研究科天文学専攻、3.ハワイ観測所、4.オクラホマ大学物理・天文学専攻、5.国立天文台、6.京都大学理学研究科宇宙物理学教室、7.ナサ・ゴダード宇宙飛行センター、8.クイーンズ大学ベルファスト 宇宙物理学研究センター)

キーワード:太陽系外惑星, 残骸円盤, 原始惑星系円盤, 巨大惑星, 直接撮像観測

太陽系外惑星(系外惑星)の発見数は現在1,000に及ぶまでになった. さらに,Kepler衛星による探査によって,3,000を超える系外惑星候補天体が報告されている(Huber et al. 2013).このように惑星系は我々の銀河系において普遍的に存在するものであるが,これまでの系外惑星の観測研究の成果として,その特徴は非常に多様であることもわかってきた.一方,それらの惑星を形成する母体である星周円盤の観測的研究も進んでいる. 特に,近年運用が開始された電波望遠鏡ALMAによって原始惑星系円盤の構造に対して興味深いデータが得られるようになってきたが(e.g., van der Marel et al. 2013; Casassus 2013),星周円盤に対する理解はALMAによって今後ますます進むことが期待できる. 直接撮像法は数十AU程度の大きさの軌道を持つ系外惑星(広軌道惑星)の探査や研究を可能にするが,そのような惑星の探査はドップラー法やトランジットの法などの間接的手法では極めて難しい.また,直接撮像法は星周円盤の探査やその特徴の研究に対しても有効な手法である.実際に直接撮像法による原始惑星系円盤や残骸円盤からの散乱光の高解像度観測によって,円盤と惑星の物理的な結びつきを示唆する重要な証拠がこれまで得られてきた.我々は,すばる望遠鏡と最新の補償光学装置AO188,さらに新たに開発した高感度近赤外カメラHiCIAOを用いて系外惑星と星周円盤を直接撮像探査するプロジェクトであるSEEDSをこれまで進めてきた.SEEDSはおよそ500のターゲットを最終的に観測することを目指しており,主に年齢が百万年から10億年の太陽型星をターゲットにしているが,中質量星や低質量星も一部ターゲットに含まれている.SEEDS計画はその開始から5年目の探査を現在行なっているが,10以上の遷移円盤や残骸円盤において溝や渦巻き構造などの興味深い円盤構造を検出するのに成功している(e.g., Hashimoto et al. 2012; Grady et al. 2013).さらに,アンドロメダ座Kappa星というB型星を公転する大質量巨大惑星の候補天体(Carson et al. 2013)や,G0型の太陽型星星であるGJ 504から約44AU離れた軌道を公転する巨大ガス惑星(GJ 504b)の検出に成功している(Kuzuhara et al. 2013).GJ 504bの質量は木星の4倍程度と推定され,さらに有効温度は500Kと推定される.これまで検出された広軌道惑星の中でも,この質量推定値は最低の値の一つであり,さらにその有効温度はこれまでで最低温の推定値である.追加で行った観測からは,GJ 504bの大気にメタンが存在することも示唆されたが(Janson et al. 2013),直接撮像惑星においてメタンを検出するのは初のことである.このように,SEEDSはこれまで知られていない様な特徴をもつ系外惑星の検出やその特徴を調べることに成功している.全探査完了後,SEEDS探査結果の総合的・統計的な分析を行なう予定であるが,それは系外惑星や星周円盤に対する理解をよりいっそう前進させると期待される.また,それらの成果は地球型惑星の探査などの将来の系外惑星探査においても重要な試金石になることも期待される. 本講演では,主にGJ 504bの検出など最新のSEEDS探査の成果について報告する.さらに,SEEDS計画の全体的状況や進捗,今後の予定についても報告する.