18:15 〜 19:30
[PPS21-P10] 微惑星衝突における衝突破壊モデルの再検討
惑星形成過程において、微惑星同士または微惑星と原始惑星の衝突は頻繁に起こり、そのような衝突を経て天体は成長する。ところが、そのような衝突には破壊的な衝突も含まれており、それらは成長を促すどころか天体を粉々にしてしまう。すなわち、そのような衝突がどの程度破壊的であったかを知ることは、微惑星の成長過程を正しく理解する上で重要である。
これまでに、衝突前の質量の半分が飛び散ってしまうような破壊的な衝突を引き起こす衝突エネルギーQD*は様々な条件で調べられており(Holsapple et al., 2002; Benz & Asphaug, 1999; Leinhardt & Stewart, 2009)、惑星形成を論じる際にはそのような破壊的な衝突のみが重要視されてきた。QD*の値で現在広く引用されているのが、Benz & Asphaug 1999によって計算されたものである。彼らは非常に多くの衝突シミュレーションによりQD*を決定しているが、彼らの数値シミュレーションにおける解像度は極めて低く、QD*の値が収束する解像度も調べていない。また、最近の研究によると、衝突エネルギーがQD*よりも小さいような小規模な衝突も、そのような衝突は頻度が多いため、惑星の成長を考える上で重要であることが示唆された。ところが、そのような小規模な衝突から大規模衝突をつなぐ信頼できるモデルも存在していない。
惑星の成長をより正確に議論するためには、正しいQD*の値と、小規模衝突における、衝突エネルギーとその際に飛び散るイジェクタ質量との関係が必要となる。本研究では、衝突シミュレーションにより、QD*の解像度依存性を調べ、微惑星衝突におけるQD*の値を再調査した。また、小規模衝突における衝突エネルギーとイジェクタ質量の関係性を定式化した。本研究では、SPH法(自己重力入り、物質強度抜き)と呼ばれる流体計算コードにより、岩石微惑星同士の衝突シミュレーションを系統的に行った。衝突条件としては、100km、10kmサイズのターゲット天体と様々なサイズの天体の衝突を考え、衝突速度、衝突角度、解像度を様々に変えて計算した。
その結果、QD*の値は解像度に依存することがわかった。これは衝突後の衝撃波、希薄波伝播及び破片放出過程で発生するシアー流により、初期エネルギーの、ターゲット天体の運動エネルギーと内部エネルギーへのエネルギー分配率が解像度依存性を持つことに由来する。このエネルギー分配率は7.5×107粒子数を費やしたところで収束する。Benz & Asphaug 1999で使われていた粒子数は5×104であり、正しいQD*の値を求めるには不十分であることがわかった。本研究では、可能な限り高解像度でQD*を求めたのだが、その値は彼らの値よりも半桁ほど小さくなった。これは微惑星同士の衝突がこれまで考えられてきたよりも破壊的であったことを意味する。実際に本研究と彼らのQD*の値を使って、Kobayashi et al. 2010で提案された解析解により原始惑星の成長を見積もったところ、最終的に形成される原始惑星質量は、先行研究の値を用いた場合よりも半分ほど小さくなった。
また、小規模な衝突を含めた様々な規模の衝突に対する衝突エネルギーと破片質量の関係性をスケーリング則として定式化した。このスケーリング則は、ターゲットサイズ、QD*で規格化した衝突エネルギー、衝突速度でスケーリングできることもわかった。しかし、衝突角度には依存し、異なる式が得られた。今回得られたQD*とスケーリング則をKobayashi et al. 2010で提案された解析解に与えたところ、最終原始惑星質量は1AUで0.058地球質量、5AUで0.17地球質量、という結果が得られた。
これまでに、衝突前の質量の半分が飛び散ってしまうような破壊的な衝突を引き起こす衝突エネルギーQD*は様々な条件で調べられており(Holsapple et al., 2002; Benz & Asphaug, 1999; Leinhardt & Stewart, 2009)、惑星形成を論じる際にはそのような破壊的な衝突のみが重要視されてきた。QD*の値で現在広く引用されているのが、Benz & Asphaug 1999によって計算されたものである。彼らは非常に多くの衝突シミュレーションによりQD*を決定しているが、彼らの数値シミュレーションにおける解像度は極めて低く、QD*の値が収束する解像度も調べていない。また、最近の研究によると、衝突エネルギーがQD*よりも小さいような小規模な衝突も、そのような衝突は頻度が多いため、惑星の成長を考える上で重要であることが示唆された。ところが、そのような小規模な衝突から大規模衝突をつなぐ信頼できるモデルも存在していない。
惑星の成長をより正確に議論するためには、正しいQD*の値と、小規模衝突における、衝突エネルギーとその際に飛び散るイジェクタ質量との関係が必要となる。本研究では、衝突シミュレーションにより、QD*の解像度依存性を調べ、微惑星衝突におけるQD*の値を再調査した。また、小規模衝突における衝突エネルギーとイジェクタ質量の関係性を定式化した。本研究では、SPH法(自己重力入り、物質強度抜き)と呼ばれる流体計算コードにより、岩石微惑星同士の衝突シミュレーションを系統的に行った。衝突条件としては、100km、10kmサイズのターゲット天体と様々なサイズの天体の衝突を考え、衝突速度、衝突角度、解像度を様々に変えて計算した。
その結果、QD*の値は解像度に依存することがわかった。これは衝突後の衝撃波、希薄波伝播及び破片放出過程で発生するシアー流により、初期エネルギーの、ターゲット天体の運動エネルギーと内部エネルギーへのエネルギー分配率が解像度依存性を持つことに由来する。このエネルギー分配率は7.5×107粒子数を費やしたところで収束する。Benz & Asphaug 1999で使われていた粒子数は5×104であり、正しいQD*の値を求めるには不十分であることがわかった。本研究では、可能な限り高解像度でQD*を求めたのだが、その値は彼らの値よりも半桁ほど小さくなった。これは微惑星同士の衝突がこれまで考えられてきたよりも破壊的であったことを意味する。実際に本研究と彼らのQD*の値を使って、Kobayashi et al. 2010で提案された解析解により原始惑星の成長を見積もったところ、最終的に形成される原始惑星質量は、先行研究の値を用いた場合よりも半分ほど小さくなった。
また、小規模な衝突を含めた様々な規模の衝突に対する衝突エネルギーと破片質量の関係性をスケーリング則として定式化した。このスケーリング則は、ターゲットサイズ、QD*で規格化した衝突エネルギー、衝突速度でスケーリングできることもわかった。しかし、衝突角度には依存し、異なる式が得られた。今回得られたQD*とスケーリング則をKobayashi et al. 2010で提案された解析解に与えたところ、最終原始惑星質量は1AUで0.058地球質量、5AUで0.17地球質量、という結果が得られた。