日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS22_1AM1] 隕石と実験からみた惑星物質とその進化

2014年5月1日(木) 09:00 〜 10:45 415 (4F)

コンビーナ:*木村 眞(茨城大学理学部)、大谷 栄治(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、宮原 正明(広島大学理学研究科地球惑星システム学専攻)、座長:宮原 正明(広島大学理学研究科地球惑星システム学専攻)

09:30 〜 09:45

[PPS22-03] CR2コンドライト中に見つかったエクロジャイト的クラストの起源:巨大な微惑星の頻繁な衝突破壊の証拠?

*比屋根 肇1杉浦 直治1木多 紀子2木村 眞3森下 祐一4竹鼻 祥恵1 (1.東京大学大学院理学系研究科、2.米、ウィスコンシン大学マディソン校、地球科学教室、3.茨城大学理学部、4.静岡大学大学院理学研究科)

キーワード:エクロジャイト, CRコンドライト, 酸素同位体, 希土類元素, 微惑星衝突, 拡散

NWA801 (CR2)コンドライト中に見つかったエコンドライト的クラストは、惑星科学において次のような重要性を持つ(Sugiura et al., 2008; Kimura et al., 2010, 2013): (i) エコンドライトがコンドライトより早く形成された強い証拠である、(ii)クラストにはエクロジャイト的な鉱物相(ザクロ石とオンファス輝石)が含まれており、高圧で生成されたことが示唆される(~3 GPa, ~1000 C; Kimura et al., 2013)、(iii) クラストにはグラファイトを含む岩相(GBL)と含まない岩相(GFL)が含まれており、GBLにおけるグラファイトの存在はユレイライトとの関連性を示唆する。我々はクラスト中のいくつかの鉱物に対してイオンマイクロプローブによる酸素同位体分析、希土類元素分析をおこなった(Hiyagon et al., 2014)。本講演では、新しく得られたデータおよび拡散計算をもとに、クラストが巨大微惑星内部での高圧により作られたのか、衝撃圧によりつくられたのかについて議論する。鍵となる観測事実は次のとおりである。(1)オリビン粒子(~20ミクロン)は化学的にほぼ均一でMg# 66-68を示す。(2)ほとんどのopx(~20ミクロン)は均一でMg# 70-75 であるが、大きなopx粒子(50-80ミクロン)にはMgに富むコア(Mg# 78-87)がある。(3)異なる地質温度圧力計(opx-cpx, garnet-cpx, garnet-opx, garnet-olの鉱物ペアに対する7つの式)が整合的な温度圧力(940-1080 C, 2.8-4.2 GPa)を示す。(4)すべての酸素同位体データ(ol +opx)は傾き~0.6の相関線上に乗る。GFLのデータ(ol)は均一でCCAM lineの近くにプロットされ(delta18O ~+5 パーミル)るが、GBLのデータ(ol +opx)はdelta18Oが+2.4 から+4.4 パーミルまでばらついている。(5)希土類元素を含む主要な鉱物はクロルアパタイト(軽希土類、重希土類とも)およびザクロ石(重希土類)である。GBLおよびGFLの希土類元素バルク組成の推定値は、それぞれ~1.2 x CI, ~1.8 x CIの存在度でほとんどフラットなパターンである(分別を示さない)。 二つの岩相のグラファイトの有無は、smeltingと呼ばれる反応、FeO (silicate) + C (graphite) = Fe (metal)+ CO (gas)、の有無が関与していると考えられる。すなわち、GBLは微惑星の深い場所で、GFLは微惑星の浅い場所で生成された可能性がある。 我々は、衝撃圧縮モデルおよび静水圧モデルの二つのモデルについて考察する。拡散の計算に基づいて、次のような議論をおこなった。(1)オリビンおよびopxのほとんど均一なFe/Mg比(一部のopxにはMgに富むコアが見られる)を説明するためには、~1000 Cで120-800年間の加熱が必要である。(2)GBLに見られる酸素同位体不均一は、オリビンのFe/Mg比が均一化する前につくられている必要がある、(3)異なる地質温度圧計が整合的な温度圧力を示すためには、異なる鉱物ペア間の異なる元素の分配が平衡に達している必要がある。このことは、静水圧的な高圧モデルを強く示唆する。(5)異なる地質温度圧力計の示す値の整合性はまた、数百年間の加熱の後に急冷されたことを示唆するが、このことは微惑星の破壊を示唆しているかもしれない。 本研究の結果は、太陽系の進化過程のある段階での、巨大微惑星の頻繁な衝突と破壊を示唆しているのかもしれない。 参考文献:Kimura M. et al. (2010) (abstract) Meteoritics and Planetary Science 45, A105; Kimura M. et al. (2013) American Mineralogist, 98, 387-393; Sugiura N. et al. (2008) (abstract) Meteoritics and Planetary Science 43, A149. Hiyagon H. et al. (2014) in preparation.