日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS23_2AM1] 月の科学と探査

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 413 (4F)

コンビーナ:*諸田 智克(名古屋大学大学院環境学研究科)、本田 親寿(会津大学)、西野 真木(名古屋大学太陽地球環境研究所)、長岡 央(早稲田大学先進理工学部)、座長:本田 親寿(会津大学)、嵩 由芙子(京都大学理学研究科)

10:15 〜 10:30

[PPS23-06] 月のマントル進化の数値シミュレーション

*小河 正基1 (1.東京大学総合文化研究科)

キーワード:マントル進化, マントル対流, 火成活動, 月

月では、火成活動はマントル進化史の最初の10億年程度のうちにピークを過ぎ、その後は急速に衰えた。この特徴を理解することを目的とし、火成活動とマントル対流によるマントル進化の数値シミュレーションを行った。その結果、月のような小さい惑星では火成活動の時間スケールが火星などより大きな惑星より遥かに長く数億年程度になることがわかった。これは、より大きな惑星では、マントル対流の湧昇域でマグマが生成されるとその浮力のためさらにこの湧昇流が強まるというポジティブフィードバックがかかるが、月はこのフィードバックがかかるにはマントルのレイリー数が低すぎるためである。この長い時間スケールは月の海を形成した火成活動の時間スケールをよく説明する。また、このポジティブフィードバックの欠如は、火成活動の熱史への影響(サーモスタット効果)も弱い事を意味する。もともと月ではその低いレイリー数のため対流による熱輸送の熱史への効果も弱いため、このことは、月の進化にとって最も重要なのは、熱拡散による地表面からの冷却である事を示唆する。実際マグマオーシャンの効果を考慮せず、組成的に均質で温度はソリダス温度に等しいという初期条件から出発した予備的なマントル進化の数値シミュレーションでは、最初期の火成活動によりマントルから放射性元素が地殻に濃集して以降、マグマの母岩中の浸透率や地殻?マントル全体の放射性元素の存在量などのパラメーターの値によらず、熱拡散によるリソスフェアの厚さの増加の結果、火成活動は最初の10億年程度で衰えるという結果を得た。この結果は月の火成活動史の大枠は説明するが、同時に、現実の月で見られるおよそ20億年前まで続いた局所的な火成活動を理解するためには、マグマオーシャンの効果を考慮する必要のある事も示唆する。