日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS25_2PM1] 隕石解剖学: 太陽系物質の総合的理解に向けて

2014年5月2日(金) 14:15 〜 15:00 213 (2F)

コンビーナ:*瀬戸 雄介(神戸大学大学院理学研究科)、臼井 寛裕(東京工業大学地球惑星科学科)、伊藤 正一(京都大学大学院理学研究科)、薮田 ひかる(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、座長:瀬戸 雄介(神戸大学大学院理学研究科)

14:45 〜 15:00

[PPS25-17] 磁気体積力による並進運動を用いた隕石微粒子の抽出と同定

*久好 圭治1植田 千秋1 (1.大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)

キーワード:磁気放出, 非破壊同定, 磁気抽出, 微小重力, 並進運動, 磁気体積力

これまで地球科学の諸分野では,磁性鉱物を抽出・同定する手段として,磁場勾配力が用いられてきた.しかしこの動作原理は,試料に働く磁気体積力が重力に比して十分大きい時に成立するため,磁鉄鉱,Fe-Ni合金等,自発磁化をもつ一部の物質でだけで有効であると考えられてきた.周知のように始原的隕石に代表される惑星始原物質は,起源の異なる多様な粒子の集合体であるため,SIMSや顕微ラマンなど様々なマイクロプローブ技術を駆使して研究が進められている.しかし,集合体表面のin-situ分析で,構成粒子をもれなく把握できる保証は必ずしもない.そのため精密分析の前段階として,隕石を構成する個々の粒子を分離・識別することが望まれるが,そのための有効な手法は確立していない.前回までに私たちは,磁場勾配力による並進運動を利用して,自発磁化を有さない一般の物質の磁化を測定する方法を確立し,これに基づく物質同定の方法を提案した.具体的には微小重力条件下で,磁場強度が単調減少する空間に反磁性粒子を解放し,それらが磁場ゼロの方向へ並進する速度を解析することで,磁化率を検出した.上記の運動は磁気体積力に由来するため,磁場分布が同一の場合,磁場の外での終端速度は粒子質量に依存せず,物質固有の磁化率のみに依存する.従ってこの終端速度を測定することで,質量計測なしに磁化率が検出できる.上記のセットアップで,異種粒子の集団を磁場勾配中の一点で開放した場合,磁場の外で粒子は物質の種類ごとに別々の集団に分離して並進することが期待される.さらに集団ごとの速度から磁化率を検出し文献値と比較することにより,物質の種類を非破壊で識別することができる[1-3].   上記の原理に基づき,今回,無機物質vs有機物質,および反磁性体vs常磁性体の分離・識別を試みた。具体的には,無機物質としてグラファイト,SiCおよびコランダム,有機物質として,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポリエチレンの粒子混合体を準備し,その分離を行った.粒子は50-100μmの大きさである.一方,反磁性体vs常磁性体の分離では,反磁性体のグラファイト,ビスマスおよび合成フォルステライトと,常磁性体のサンカルロスオリビンの粒子を分離することができた.微小重力は前回同様,室内型の小型落下シャフトを用いて発生させた.落下距離は1.8m,微小重力継続時間は約0.5秒である.実験装置は30×30×20cmの直方体の落下ボックス内に配置した.それらの装置は,NdFeB磁石製の磁気回路(B <0.8T),電動アクチュエーターを装備した真空チャンバー,試料ホルダー解放信号受信装置,試料ホルダーコントローラー,電池,撮影用HVビデオカメラで構成される.磁気分離の適応範囲はこれまでの自発磁化を有する一部の物質に限られていたが,今回の計測により一般の固体物質に拡張される展望が得られた.有機化学・生化学の分野ではクロマトグラフィの技術を用いて,有機分子の混合物を分子量ごとに分離する方法が確立している.無機物質でもこれと同様の過程が確立すれば,始原的隕石の分析のみならず固体天体表土のその場分析等への展開が考えられる.Reference[1] K. Hisayoshi, S. Kanou and C. Uyeda : Phys.:Conf. Ser., 156 (2009) 012021.[2] K. Hisayoshi, C. Uyeda, K. Kuwada, M. Mamiya and H. Nagai, : Phys.:Conf. Ser., 327 (2011) 012058.[3] C. Uyeda, K. Hisayoshi, and S. Kanou : Jpn.