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[SCG62-07] 山口県徳佐盆地の地下における深部流体の流動
キーワード:深部流体, CSAMT法, 徳佐-地福断層, 地下水流動
わが国には,内陸部にも関わらず高塩濃度の地下水が湧出していることが知られており(酒井ほか,1978),流体の湧出箇所は地表からの自然湧水とボーリング孔からの湧水に区分される.深部流体は地下深部よりもたらされるため,その湧出箇所の特定は高レベル放射性廃棄物の地層処分場のサイト選定や評価において重要である.本研究ではボーリング孔からの深部流体の湧出が観測される,徳佐盆地において地質・地下水調査及びCSAMT法による比抵抗探査を行い,ボーリング掘削で確認された深部流体がどのように岩盤中を上昇し,被覆層が存在する場合,その後どのように流動するのかに関して検討を行った.徳佐盆地内には白亜紀の溶結凝灰岩と流紋岩溶岩が分布し,これらを未固結の砂礫,粘土からなる更新統と完新統が覆っている.基盤岩中においては,徳佐-地福断層(佐川ほか,2008)に沿い,確認される範囲で約2.5kmの区間において低比抵抗帯が連続し,堆積物中においては断層の北側に低比抵抗帯が舌状に分布している.堆積物中の低比抵抗帯は地下水の水質分布の結果からNaCl型地下水を起源とすることが明らかとなった.また,ボーリング孔から湧出する高濃度地下水の比抵抗と物理探査により得られた比抵抗が整合的であることより,岩盤中の低比抵抗はこれら高塩濃度地下水の上昇を捉えているものと考えられる.以上より,徳佐盆地における深部流体は,徳佐-地福断層沿いに上昇し,被覆層に浸透した後,天水による希釈を受けながら河川方向に流動したものと考えられ,ボーリング孔からの湧水は断層沿いに連続的に湧出している可能性が示された.