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[SCG64-17] 琉球弧南部の繰り返しスロースリップイベントと超低周波地震活動の関係
キーワード:超低周波地震, スロースリップイベント, 琉球海溝
琉球弧南部では深さ30~50kmの沈み込んだプレート上面で繰り返しスロースリップイベントが発生している(Heki & Kataoka, 2008)。またその西側の与那国島付近では、2002年3月の台湾近海地震(Mw6.8)によるアフタースリップが2002年から2005年にかけて発生した(Nakamura, 2009)。 最近、琉球海溝に沿って定常的に超低周波地震が発生していることが明らかになってきた(Ando et al., 2012)。琉球海溝に沿って発生するスロースリップイベントと超低周波地震は、この地域のプレート間すべりと密接に関係していると考えられる。そこでこれらスロースリップイベント・アフタースリップに対する超低周波地震活動との関係を明らかにした。 防災科学技術研究所の広帯域地震計記録網(FNET)の広帯域地震計記録およびIRISの観測点を使用した。使用した観測点は琉球弧の島々および九州地域に設置された観測点15点およびIRISのTATO(台北)とSSE(上海)である。これらの観測点で記録された上下動成分の連続観測記録を解析に使用した。解析期間は2002年1月1日~2013年9月30日である。連続波形に0.02-0.05Hzのバンドパスフィルターをかけ、目視で低周波イベントを検出した。次に検出した低周波イベントを地震カタログおよび2Hz以上の高周波波形記録と比較し、遠地地震および近地地震を除去した。さらに低周波イベントとして観測される波がRaleigh波であると仮定して手動で最大振幅到達時刻を読み取り、震源再決定を行った。 約11年間で震源決定できたVLFEは合計6299個であった。VLFEの震源は大部分が琉球海溝軸付近に分布する。VLFEは西表島南方沖および沖縄本島南方沖、沖縄本島北東沖から奄美大島付近に集中する。沖縄トラフ付近にもトラフ軸に沿って震源が分布する。しかしこれは、琉球弧の観測点配置が直線的なために生じた震源決定のエラーによる可能性が高い。 次に、震源が密集した各領域で累積地震個数を調べた。まず八重山諸島南方沖では、2002~2004年の活動と比較して2005~2010年に活動が低下、さらに2011年後期から活発化の傾向が見られた。この傾向は2002~2005年にかけて与那国島周辺で発生したアフタースリップの影響が考えられる。沖縄本島南方沖では、長期的にはほぼ定常的なVLFE活動が見られる。短期的活動としては、VLFEが2,3カ月間隔で群発的・バースト状に発生する様子が見られた。奄美大島沖では沖縄本島南方沖よりもさらに群発的にVLFEが発生している。奄美大島沖では2002年中旬と2010年後半に大きな活動の増加が見られる。しかしこの活動に対応する地殻変動等のイベントは確認できなかった。 西表島直下の繰り返しSSEとの対応を比較したところ、期間中に発生したSSE24イベント中14イベントに対してVLFEが活発化する傾向が見られた。SSE発生中のVLFE発生率は、通常のVLFE発生率に対して約2~3倍に増加する。一方、通常の地震活動に対してSSE発生との関係は明瞭ではなかった。西表島直下のSSEによってVLFEが特に活発化する理由として、SSE発生による周辺での応力変化が、低角逆断層型地震である超低周波地震(Ando et al., 2012)に対して特に活発化を促した可能性がある。