日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG65_2AM1] 応力と地殻ダイナミクス

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 423 (4F)

コンビーナ:*佐藤 活志(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、今西 和俊(産業技術総合研究所)、大坪 誠(産業技術総合研究所 地質情報研究部門)、加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)、座長:今西 和俊(産業技術総合研究所)、佐藤 活志(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

09:30 〜 09:45

[SCG65-03] 定向性を持つ断層群のすべり傾向係数評価による応力逆解析法の検出能向上

*佐藤 活志1 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:応力逆解析, 不均一な断層スリップデータ, すべり傾向係数, 方位分布

断層面の方位分布は,剪断応力と法線応力の比によって定義されるすべり傾向係数(Morris et al., 1996)が大きいほど頻度が大きいという定向性を持つ場合がある(例えば,Lisle and Srivastava, 2004).一方で,多くの応力逆解析手法は,断層の変位方向が剪断応力に平行であるというWallace-Bott(W-B)仮説に基づいて,断層の方位から地殻応力を推定する.この仮説は,岩体中の既存の弱面を利用して滑った断層を解析するのに有利である.なぜなら,既存の弱面はすべり傾向係数が小さく破壊基準を満たしにくい条件でも滑り得るからである.しかしながら,W-B仮説の仮定が緩いことは,応力逆解析法の検出能の低さをもたらしてしまう.例えば,共役断層が発達する場合,共役断層法によれば主応力軸は2方向の断層面を2等分する方向に確定する.ところが,W-B仮説によれば,主応力軸は2方向の断層面の成す角の範囲に含まれるとしか制約されない.共役断層のように定向性を持つ断層データを得たならば,W-B仮説から逸脱しても,すべり傾向係数が大きいはずだと仮定する方が,応力への制約条件を厳しくできるのである.特に,複数の応力に起因する(不均一な)断層データを解析する場合には,高い検出能が求められる.そこで本研究は,すべり傾向係数を加味した応力逆解析法を提案する.W-B仮説に基づく応力逆解析法のひとつであるHough法 (Yamaji et al., 2006; Sato 2006)は,観察された断層すべり方向と剪断応力ベクトルのなす角に対して単調減少する「適合度」を最大化する手法である.新手法は,適合度とすべり傾向係数の積を最大化するように最適応力を探索する.新手法のテストとして,解の分かっている模擬データを解析した.模擬データは,南北圧縮の逆断層型応力に適合する断層200条と,東西引張の正断層型応力に適合する断層50条から成る.前者の断層面方位はランダムに生成し,後者の断層面はすべり傾向係数の大きい方位に集中させた.従来のHough法では,南北圧縮応力しか検出できなかったが,新手法を用いると両方の応力を検出できた.天然の断層データへの適用例として,房総半島東部の後期中新統安房層群を切る小断層群の解析結果を紹介する.この地域の小断層群には,逆断層型応力と正断層型応力に起因するものが混在している(例えば,Angelier and Huchon, 1987).これらの応力の検出には,従来は先験的に断層を分類することが必要だったが,新手法を用いることで自動検出に成功した.ReferencesAngelier, J. and Huchon, P. 1987, Earth Planet. Sci. Lett., 81, 397-408.Morris, A., Ferrill, D.A. and Henderson, D.B., 1996, Geology, 24, 275-278.Lisle, R.J. and Srivastava, D.C., 2004, Geology, 32, 569-572.Sato, K., 2006, Tectonophys., 421, 319-330.Yamaji, A., Otsubo, M. and Sato, K., 2006, Journal of Structural Geology, 28, 980-990.