日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM37_30AM1] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2014年4月30日(水) 09:00 〜 10:45 413 (4F)

コンビーナ:*櫻庭 中(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、望月 伸竜(熊本大学大学院先導機構)、座長:櫻庭 中(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、山本 裕二(高知大学 海洋コア総合研究センター)

09:30 〜 09:45

[SEM37-03] 8~11世紀の岡山県における考古地磁気強度の傾向

*北原 優1山本 裕二2畠山 唯達3鳥居 雅之4亀田 修一5 (1.高知大学 大学院 総合人間自然科学研究科、2.高知大学 海洋コア総合研究センター、3.岡山理科大学 情報処理センター、4.岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科、5.岡山理科大学 生物地球学部 生物地球学科)

キーワード:考古地磁気強度, IZZIテリエ法, 綱川‐ショー法, 須恵器古窯

本発表では、岡山県備前市佐山地区における8~11世紀までの期間に属する3サイトの考古地磁気強度の推定値を提示する。用いた焼土試料は、同地区における奈良~平安時代の窯業発展史の解明を主な目的とする考古学的なプロジェクト(岡山理科大学考古学研究室, 2012; 2013)の中で実施された5回の調査の際に、発掘された須恵器古窯跡の床面および壁面より採取されたものである。年代値は、陶邑型式編年(e.g. 中村, 2006)に準拠する考古学年代を採用すると、3サイトの内、佐山新池1号窯跡と佐山東山窯跡は8世紀後半(? 775±25年)、佐山東山奥窯跡は10世紀周辺(? 900±50年)である(岡山理科大学考古学研究室, 2012; 2013)。 岩石磁気実験と段階熱消磁実験の結果、(1)これらの試料は加熱に対して安定であり、(2)試料の形状異方性も小さく、(3)磁性粒子集団の大部分が数%のチタンを含むチタノマグネタイトでありブロッキング温度が高いことが分かっている。新池窯からは15個の焼土試料から19試片、東山窯からは10個の焼土試料から10試片、東山奥窯からは9個の焼土試料から19試片を整形し、IZZIテリエ法(2回加熱法; Yu & Tauxe, 2005)による古地磁気強度測定を行った。厳密に設定した合格基準をパスした測定結果から得られた考古地磁気強度は、新池窯が61.6±4.4 μT (N=4)、東山窯が51.8±6.5 μT (N=8)、東山奥窯が49.8±9.8 μT (N=9)となった。これらの値は、予察的に実施した綱川‐ショー法(Tsunakawa and Shaw, 1994; Yamamoto et al., 2003)により得ている強度とも矛盾しない。我々のデータを日本における最新の考古地磁気強度データのコンパイル結果(Yoshihara et al., 2003)と比較すると、3サイトともにデータのばらつきは大きいものの、おおよそ整合的である。平均的な傾向に着目すれば、紀元後600年以降に見られる著しい強度減少の様子についても矛盾していないことが確認できる。