日本地球惑星科学連合2014年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM37_30PO1] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*櫻庭 中(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、望月 伸竜(熊本大学大学院先導機構)

18:15 〜 19:30

[SEM37-P01] 新生代の南太平洋赤色粘土の環境磁気学的研究: レアアース含有量との関連

*下野 貴也1山崎 俊嗣2鈴木 勝彦3 (1.筑波大学・生命環境科学研究科、2.東京大学大気海洋研究所、3.独立行政法人海洋研究開発機構・地球内部ダイナミクス領域)

キーワード:赤色粘土, REY, 南太平洋環流, 完新世, 環境磁気学

深海底堆積物の約40%を占める赤色粘土は、年代決定に有効な微化石をほとんど含まないことや堆積速度が数mm/1000年と極めて遅いことなどから、これまで古海洋学や古地磁気学の研究対象とされることは少なかった。しかし、Kato et al. (2011)により、太平洋に広く分布する赤色粘土に非常に高濃度のレアアースを含む層の存在が明らかとなり、”レアアース泥”と呼ばれる新たな海底資源として注目されるようになった。Kato et al. (2011) の中でも特にREY(希土類元素およびイットリウム)含有量が高い値(最大値2110 ppm)を示したDSDP(深海掘削計画) Site 596は、南太平洋環流の西端に位置し、厚さ約50 mの赤色粘土からなる。しかし、堆積物コアはかなりの欠損があり、古地磁気・岩石磁気測定は行われなかった。2010年にIODP(統合国際深海掘削計画) Exp.329 において、Site 596と同一地点(Site U1365)で約76 mの赤色粘土のコア試料が再び採取された。本発表では、Site U1365の赤色粘土を用いて、REY含有量と岩石磁気解析(磁化率, S-0.1T, S-0.3T, κARM/SIRM)による結果の比較を行う。さらに、古地磁気層序とSite 596の年代モデルを利用してSite U1365の年代推定を行い、磁気特性とレアアース含有量や新生代以降の長期的な気候変動との関係についての考察を行う。
Site U1365における主な磁性鉱物は生物起源マグネタイトで、コア上部では陸源と思われるMaghemiteの含有量が増加している (Yamazaki and Shimono, 2013)。Site U1365のREY含有量は、深さ8~38 mで平均1300 ppm、最大値2470 ppmと非常に高い値を示し、さらに同一地点で採取されたSite 596 (Kato et al., 2011)のREY含有量とよく似た変化パターンを示した。その最大値は、Site 596よりも約360 ppm高く、Site 596においては、測定間隔が大きかったこと、もしくはコアの欠損により最大値が測定できなかった可能性が考えられる。また、REYと岩石磁気パラメータのκARM/SIRM, S-0.3Tの変化パターンは相関し、REY含有量が高い部分は、陸源磁性鉱物の割合が少ない部分に相当することがわかった。堆積物の年代は、約5 Maまでは古地磁気方位により、それ以前は、Site 596のコバルトの沈積流量を一定と仮定した年代モデル (Zhou and Kyte, 1992)を基に、磁化率とREYのパターンによるSite 596とU1365間の対比により推定した。κARM/SIRM, S-0.3Tより、風成塵起源の磁性鉱物の割合は、約30 Maから現在にかけて大きく増えていると推定される。この時期には、南極周辺海域で2つの海峡(タスマン海峡・ドレイク海峡)の開口と拡大がおき、南極氷床が拡大したことが知られている。南半球の寒冷化に加え、オーストラリア・プレート北上に伴いオーストラリア大陸が中緯度の乾燥帯へ移動したことにより、南太平洋域で風成塵由来のフラックスが増加したのかもしれない。また、REYが最大値となる年代はEocene/Oligocene境界前後にあたり、Hyeong et al. (2013)によって示された太平洋の海山におけるリン酸塩沈積イベントと対応するように見える。さらに、本研究で確認されたREYと磁気特性の関係は、南鳥島近海の赤色粘土にも同様の特徴がみられ、太平洋の広域的な古環境・古海洋イベントを記録している可能性が示唆される。