日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD21_28AM2] 測地学一般

2014年4月28日(月) 11:00 〜 12:45 413 (4F)

コンビーナ:*高島 和宏(国土交通省国土地理院)、風間 卓仁(京都大学理学研究科)、座長:落 唯史(独立行政法人産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)、大市 一芳(海上保安庁海洋情報部)

11:30 〜 11:45

[SGD21-10] 50HzサンプリングのGNSS観測によって取得された地震波動について

*加藤 照之1三浦 哲2生田 領野3 (1.東京大学地震研究所、2.東北大学大学院理学研究科、3.静岡大学理学研究科)

キーワード:GNSS, 高頻度サンプリング, GPS, GPS地震学, 50Hz

高頻度のGNSS観測を行うことで地震波動を取得したりそこから地震の破壊過程などを明らかにする研究が行われるようになった(e.g., Larson et al., 2003; Miyazaki et al., 2004;Yokota et al., 2009; Ohta et al., 2012).GEONETでも大部分の観測点で1Hzサンプリングのデータが取得されるようになり,今後このような高頻度サンプリングの観測研究が活発化することが期待される.1Hz程度ではそれほど問題にはならないが,さらに5Hz,10Hzと,より高頻度のサンプリングを行った場合,GNSS受信機の特性による変位の振幅や位相にずれが生じることが知られている(e.g. Ebinuma and Kato, 2012).これらのことに注意しつつ観測を行う必要がある. 我々は,高頻度サンプリングが可能な商用のGNSS受信機を用いて50Hzでの観測を実施してきた.これまでに,観測点近傍で発生した大きな地震に伴うデータを数回取得してきたが,その中で地震動と考えられる波動を捉えることができたので紹介する.GNSS受信機はTrimble社製Net R8型受信機を3台用いた.これら3台のうち1台を2011年10月に静岡大学構内に設置し,残りの2台は2012年3月から,2011年東北地方太平洋沖地震の余震活動の活発な茨城・福島県地域の上遠野及び大同東に設置した.観測は50Hz のデータを2週間程度のチェーンメモリ方式によって取得しつつある他,30秒毎の観測も実施している.3点での観測開始以来茨城県北部や福島県浜通り地方等で震度5弱以上の地震が発生した際にいわき市上遠野及び鹿島市大同東の両観測点については研究室から受信機に付設したルータを介して受信機メモリに直接ログインして50Hzサンプリングデータを回収した.静岡大学の観測点では手動によりデータを受信機からダウンロードする方式をとった.これまでに数個の震度5弱以上の地震によるデータを取得することができた.これらの地震前後の記録をRTNetソフトウェアによって解析している. これらの地震データのうち,2013年9月20日2時25分(JST)頃に福島県浜通りで発生した地震(震源:北緯37.1度,東経140.7度;M5.9;深さ約20㎞;いずれも気象庁による)時の変動を捉えることに成功した.この時の最大震度はいわき市で震度5強であった.軌道暦はIGS最終暦を用いた.震源から約106㎞のほぼ南に位置していた大同東,及び約308㎞南西に位置していた静岡大学をそれぞれ基準点として,震源のほぼ直上に位置していた上遠野観測点の座標変化を算出した.大同東―上遠野の基線においては3成分共明瞭な地震時の振動と考えられる波形が抽出された.基線が長い分静岡大学基準の記録の方がやや明瞭さを欠き,上下成分は不鮮明ではあるが,水平の2成分では明瞭な振動が捉えられている. これら3観測点のうち,上遠野及び大同東は小学校の屋上にアンテナが設置されており,静岡大学ではかつて光波測量等に使われた観測棟にアンテナが設置されている.近傍に設置された強震動記録との比較などをおこないつつ,建物の振動の影響などを詳細に検討したいと考えている.さらにはGNSS受信機特性を考慮した振幅・位相特性の補正方法についても検討を進めていく必要がある.