日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD22_1AM1] 重力・ジオイド

2014年5月1日(木) 09:00 〜 10:45 413 (4F)

コンビーナ:*今西 祐一(東京大学地震研究所)、松本 晃治(国立天文台RISE月惑星探査検討室)、座長:小澤 拓(防災科学技術研究所)、松尾 功二(京都大学 理学研究科)

10:15 〜 10:30

[SGD22-06] 絶対重力計用投げ上げ装置の反作用補償機構の性能評価

*酒井 浩考1新谷 昌人1坪川 恒也2Emanuele Biolcati3 (1.東京大学地震研究所、2.真英計測、3.L'Istituto Nazionale di Ricerca Metrologica)

キーワード:絶対重力計, 投げ上げ装置, 小型化, 反作用, 打消し装置, 重力測定

絶対重力計は重力加速度を8~9桁の精度で測定する装置である。この絶対重力計は高精度実現のために、装置が大型化してしまい設置場所が限定されるという問題がある。そのため火山の地下構造観測に用いる場合は、絶対重力測定をふもとの基準点で行い、相対重力計を携帯して基準点と観測点を往復することで重力値を測定することが多い。しかし、この手法は観測に手間がかかり、時間精度が悪くなるほか、火山活動時では、観測地点での測定に危険が伴う。本研究は、これらの状況を改善するための絶対重力計小型化に関する研究であり、精度向上のために測定誤差の要因となる落体投げ上げの反作用を打ち消す補償機構が組み込まれた装置を開発している点が従来の研究と大きく異なる点である。重力測定の手法としては落体を投げ上げ、その距離と時間を精密に計測することで重力加速度を測定する、投げ上げ方式を採用した。既存の絶対重力計では、落体を自由落下させ重力加速度を求める自由落下方式を採用するのが一般的であるが、この自由落下方式は落体を持ち上げる必要があるため、短時間で繰り返し測定ができないといった問題点や、落体を持ち上げる機構により、装置が大型化しているという問題点があった。そこで落体を持ち上げる必要がなく、短時間で繰り返し測定可能な、投げ上げ方式を採用することにより、絶対重力計の大型化している主要な部分の一つを小型化することができる。 これまでに開発した投げ上げ装置は、ピエゾ素子(電圧を加えると数μm伸縮する部品)の伸縮を拡大する装置を用いることにより落体を約3mm投げ上げることができる。また落体を投げ上げた際、固着の影響により落体が回転し、重力測定の誤差要因になっていたが、投げ上げる瞬間に落体と落体を投げ上げる装置の接触部分を瞬間的に切り離す機構を導入することで解決した。この投げ上げ装置の性能試験を2012年末に江刺地球潮汐観測施設で既存の絶対重力計の自由落下装置と入れ替えることにより行った。その結果、潮汐の重力変化が検出され、重力変化の分解能δgは40μgalであることがわかった。しかし重力の絶対値は、過去の重力測定から推測される値とずれがあり、重力測定値の確度Δgは3mgalであった。このΔgが大きい原因は、投げ上げた際の反作用による振動が、地面を通して干渉計に伝わり誤差となっているためである。 そこで、重力測定値の確度Δgを向上させるため、投げ上げた際の反作用を打ち消す装置の開発を行った。具体的には、投げ上げ用のピエゾを取り付けている板の反対側に、同じピエゾを取り付け、これら2つのピエゾに同じ信号を加えピエゾを上下対称な動きになるようにする。そして落体を投げ上げると同時に反対方向にもばねの付いたおもりを打ち出すことで反作用を打ち消すことを試みた。すると落体の上昇時は反作用を打ち消す前のピーク値の2.7%に、落体の下降時は21.8%に振動加速度をそれぞれ低減することができた。今後はさらに微調整を行い、2012年と同様の方法で重力測定を行う予定である。本講演では、その結果と開発状況について報告したい。